掲載誌 : 土木学会環境システム研究論文発表会講演集, Proceedings of Annual Meeting of Environmental Systems Research, 51:111-118 (2023)
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領域長あいさつ
社会システム領域長 増井 利彦
社会システム領域では、我々の生産や消費活動が、気候をはじめ資源や大気など様々な環境とどのように関わり、気候変動や廃棄物、大気汚染などの環境問題をどのように解決することで、我々の豊かさを向上させることができるかを明らかにすることを目標として研究を進めています。環境問題によって被害を受けるのは人間やその他の生き物など様々ですが、今の世代だけでなくこれから生まれる将来の世代も大きな影響を受ける可能性があります。一方で、環境問題の原因を生み出しているのは、現世代やこれまでの人間による活動です。
これまでは、経済的な豊かさを得るために、環境はタダということで過剰に資源を採取し、汚染物質を排出するなど地球に大きな負荷をかけてきましたが、こうした活動は持続可能ではないことにようやく気付き、様々な場面でこれまでの活動を見直す動きが見られるようになっています。気候変動問題におけるパリ協定の1.5℃目標(産業革命前からの地球の平均気温上昇を1.5℃に抑える)や国連が定めた持続可能開発目標(SDGs)はその例で、企業や自治体も取り組みをはじめるようになりましたが、まだまだ十分ではありません。その一方で、発展途上国など経済的な豊かさがまだまだ必要という地域も存在し、配慮が必要となります。
このように、社会システム領域が扱う研究対象は非常に幅広いですが、共通するのは環境を保全しつつ、社会の持続的な発展や、経済的な豊かさも享受できるような取り組みを明らかにし、どうすればそれらが実現するかを示すことです。自然への畏敬、世代を超えた思考、弱者へのいたわりを忘れずに、研究に取り組んでまいります。
社会システム領域長 増井 利彦
研究概要
将来世代に健全な環境を残す持続可能な社会の構築に貢献
社会システム領域では、環境問題の根源となる人間の社会経済活動が、環境にとっても人間社会にとっても持続可能なものとなるように、社会システム分野の調査及び研究を行っています。
具体的には、次のような基盤的調査・研究を行っています。
- 社会・経済活動とさまざまな分野の環境問題との関わりを統合的に解明する理論と数理モデルや社会調査等の手法の開発
- 環境と経済の調和した持続可能な社会のビジョンとその実現のためのシナリオ・ロードマップ作成
- 関係者との協働を交えた具体的な対策・施策の提案等
研究室
研究室
- 地球持続性統合評価研究室地球規模で生じるさまざまな問題を総合的に扱い、持続可能な地球となるようモデル開発を中心とした研究を実施しています。
- 脱炭素対策評価研究室気候変動問題に対処するため、脱炭素社会に向けた取り組みを評価するモデル・データベース開発を行っています。
- システムイノベーション研究室エネルギーと資源が持続的に利用できるよう、飛躍的な効率向上策を含めた研究を行っています。
- 地域計画研究室都市部と地方部それぞれで、環境と快適な暮らしを両立する生活と地域計画のあり方を研究しています。
- 経済・政策研究室環境政策の効果の評価のほか、環境価値を評価するための理論研究や経済学手法の開発を行っています。
報道発表等
報道発表
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2023年12月28日英文年報「NIES Annual Report 2023」の刊行について 国立環境研究所は、2022年度の活動内容や最近の研究成果を海外向けにとりまとめた「NIES Annual Report 2023」を刊行します。
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2023年8月24日物質フロー指標の改善と温室効果ガス排出削減が両立しないサプライチェーンの要因を特定 国立環境研究所物質フロー革新研究プログラムの研究チームは、物質フロー指標とGHG排出量に作用する経済的要因と技術的要因に着目し、各要因が物質フロー指標とGHG排出量の変化に与えた影響を分析しました。
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2023年8月1日気候変動の総費用 —生物多様性や人間健康などの非市場価値と2℃目標— 国立大学法人東京大学大学院工学系研究科、日本工営株式会社、国立研究開発法人国立環境研究所、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、学校法人早稲田大学、国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所、国立大学法人愛媛大学、気象庁気象研究所、国立大学法人茨城大学、華北電力大学、学校法人立命館大学、ソウル市立大学、学校法人芝浦工業大学、国立大学法人京都大学、国立大学法人筑波大学、国立大学法人横浜国立大学の研究グループは、気候変動の緩和費用のほか、生物多様性の損失や人間の健康被害といった非市場価値の貨幣換算結果を合算して気候変動の総費用を推計しました。
お知らせ・更新情報
- 2024年2月27日ディスカッションペーパー「在宅勤務の実施に伴うエネルギー消費量への影響の分析」を公開しました
- 2023年12月27日【解説コラム】「COP28閉幕:化石燃料時代のその先へ」を公開しました
- 2023年10月11日社会領域 論文の紹介「高齢ドライバーは事故を起こしやすいのか?—1995~2015年の日本の運転者1人当たりの交通事故率の分析—」公開
- 2023年3月28日【IPCC執筆者監修】気候変動の最新「統合報告書」を独自解説(動画)を公開しました【YouTube】
- 2023年2月8日社会領域 研究者インタビューvol.14 SILVA HERRAN Diego主任研究員「“地球市民”の視点で持続可能な代替エネルギーシステムを提言する」公開
刊行物
環境儀
- アジアの研究者とともに築く脱炭素社会 統合評価モデルAIMの開発を通じた国際協力環境儀 No.74研究者:増井利彦、花岡達也
- 人口分布と環境-コンパクトなまちづくり-環境儀 No.71研究者:松橋啓介、有賀敏典
- 「適応」で拓く新時代!~気候変動による影響に備える~環境儀 NO.61研究者:肱岡 靖明、高橋 潔
- 災害からの復興が未来の環境創造につながるまちづくりを目指して~福島発の社会システムイノベーション~環境儀 NO.60研究者:五味 馨、中村 省吾
- 未来につながる都市であるために ~資源とエネルギーを有効利用するしくみ~環境儀 NO.55研究者:藤井実、大場真、戸川卓哉
- 日本低炭素社会シナリオ研究 - 2050年温室効果ガス70%削減への道筋環境儀 NO.36研究者:藤野 純一/芦名 秀一/岩渕 裕子
- 環境知覚研究の勧め - 好ましい環境をめざして環境儀 NO.25研究者:青木 陽二
- 地球環境保全に向けた国際合意をめざして - 温暖化対策における社会科学的アプローチ環境儀 NO.20研究者:亀山 康子/久保田 泉
- マテリアルフロー分析 - モノの流れから循環型社会・経済を考える環境儀 NO.14研究者:森口 祐一
- 持続可能な交通への道 - 環境負荷の少ない乗り物の普及をめざして環境儀 NO.11研究者:近藤 美則
- オゾン層変動の機構解明 - 宇宙から探る 地球の大気を探る環境儀 NO.10研究者:中島 英彰/横田 達也
国立環境研究所ニュース(テーマ別記事)
国立環境研究所研究プロジェクト報告(旧特別研究報告)
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持続可能社会転換方策研究プログラム(先導研究プログラム)
平成23~27年度SR-120-2016 -
環境都市システム研究プログラム(先導研究プログラム)
平成23~27年度SR-118-2016 -
全球水資源モデルとの統合を目的とした水需要モデル及び貿易モデルの開発と長期シナリオ分析への適用(特別研究)
平成21~23年度SR-104-2012 -
二次生成有機エアロゾルの環境動態と毒性に関する研究(特別研究)
平成21~23年度SR-101-2012 -
アジア自然共生研究プログラム(終了報告)
平成18〜22年度SR-99-2011 -
地球温暖化研究プログラム(終了報告)
平成18〜22年度SR-96-2011 -
中長期を対象とした持続可能な社会シナリオの構築に関する研究(特別研究)
平成18〜20年度SR-92-2009 -
都市大気環境中における微小粒子・二次生成物質の影響評価と予測(特別研究)
平成18〜20年度SR-91-2009 -
アジア自然共生研究プログラム(中間報告)
平成18〜19年度SR-85-2008 -
地球温暖化研究プログラム(中間報告)
平成18〜19年度SR-82-2008 -
身近な交通の見直しによる環境改善に関する研究(特別研究)
平成17〜19年度SR-79-2008 -
成層圏オゾン層変動のモニタリングと機構解明プロジェクト(終了報告)
平成13〜17年度SR-70-2006 -
地球温暖化の影響評価と対策効果プロジェクト(終了報告)
平成13〜17年度SR-69-2006 -
大陸規模広域大気汚染に関する国際共同研究(特別研究)
平成13〜17年度SR-65-2006 -
地球温暖化の影響評価と対策効果プロジェクト(中間報告)
平成13〜14年度SR-54-2003 -
輸送・循環システムに係る環境負荷の定量化と環境影響の総合評価手法に関する研究(特別研究)
平成8〜10年度SR-30-2000 -
都市型環境騒音・大気汚染による環境ストレスと健康影響に関する環境保健研究
平成4〜7年度SR-23-'97 -
閉鎖性海域における水界生態系機構の解明及び保全に関する研究
平成3〜6年度SR-20-'96 -
広域都市圏における交通公害防止計画策定のための環境総合評価手法に関する研究
平成元〜3年度SR-13-'93 -
大都市圏における環境ストレスと健康に係わる環境保健モニタリング手法の開発に関する研究
昭和63年度〜平成3年度SR-12-'93 -
環境指標を用いた都市及び自然環境等の変動予測手法開発に関する総合解析研究
昭和60〜63年度SR-5-'90
国立環境研究所研究報告
- 俳句における環境植物の調査報告R-201-2009
- A data book of outdoor activities in Austria and JapanR-200-2008
- 八景の分布と最近の研究動向R-197-2007
- Experiences of Japanese LandscapesR-190-2005
- 1900年までに日本に来訪した西洋人の風景評価に関する記述R-185-2004
- 通勤形態も考慮にいれた居住と勤務の環境に関する意識の解析 R-156-2000
- 自然風景地の利用調査法R-155-2000
- 瀬戸大橋についてのイメージや関心事の住民意識調査とその分析 R-142-'99
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気候変動枠組条約第3回締約国会議
−交渉過程、合意、今後の課題 R-139-'98 - ISO環境マネジメントシステム規格への企業の対応に関する調査研究 R-137-'98
- 自由記述法による生活環境に関する地域住民の意識の調査と分析R-132-'94
- 都市型環境汚染による健康影響・リスクの環境保健モニタリング手法に関する研究 R-130-'93
データベース/ツール
- アジア地域における大気汚染物質排出インベントリー大気汚染物質の排出構造を解析するために、中国、インド、韓国を対象として、地域別、部門別排出量別に作成された排出インベントリー
- 温室効果ガス排出シナリオに係るデータベース世界中の数百種類以上にのぼる温室効果ガスの排出予測を整理したデータベース
- 持続可能な社会に向けた日本の状況SusBBヘッドライン指標ならびに持続可能性連環指標体系を用いて日本の状況をモニタリングした結果を掲載
- 国等が策定する持続可能な発展指標(SDI)のデータベース28の国および国際機関等が策定した持続可能な発展に関わる指標(SDI)1,848件を整理したデータベース
- 筑波研究学園都市の景観変化つくば市に定めた70地点における41年間(1980年,1991年,2006年, 2021年)の景観変化の記録画像
この組織の関連情報・記事
(最新5件)
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2024年3月19日気候変動と生物多様性にまたがる知見の整理
-IPCC報告書の解説資料·動画公開と関連イベント開催-(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会同時配付) - 2024年3月6日社会領域 研究者インタビューVol.18 土屋一彬主任研究員「気候変動と生物多様性の問題を同時解決できる『食べ方』を考える」を公開
- 2024年2月29日社会領域 研究者インタビューVol.17 久保田 泉主幹研究員「世の中の仕組み 変えるために法を学び 発信する環境法学者」公開
- 2024年2月27日ディスカッションペーパー「在宅勤務の実施に伴うエネルギー消費量への影響の分析」を公開しました
- 2023年12月28日英文年報「NIES Annual Report 2023」の刊行について(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会同時配付)