- 予算区分
- 基盤研究(B)
- 研究課題コード
- 2426CD004
- 開始/終了年度
- 2024~2026年
- キーワード(日本語)
- 気候影響,開発,フィードバック
- キーワード(英語)
- Climate change impacts,Development,Feedback
研究概要
気候影響間での相互作用ならびに気候影響被害により懸念される世界各国での開発の遅延が適応能力や緩和能力に時間蓄積的に及ぼす効果を考慮した場合、将来の全球規模の影響被害はどの程度増減するのかを論じるべく、生産要素や技術関連変数への気候影響の時間蓄積を考慮するための応用一般均衡モデルAIM/Hubの改良、気候影響が開発速度に及ぼす影響の包括的整理ならびに主要影響の定量化戦略の検討、気候影響予測出力データならびに簡易影響予測手法の収集・整備、大規模事象の最新研究知見把握とそれが各部門の気候影響に及ぼす潜在的作用の調査、開発速度へのフィードバック影響を時間蓄積的に考慮した気候変動影響予測、を実施する。
研究の性格
- 主たるもの:技術開発・評価
- 従たるもの:政策研究
全体計画
本研究は、以下の5つの研究目標に分けて、その実施計画を説明できる。1. 生産要素や技術関連変数への気候影響の時間蓄積を考慮するためのAIM/Hubモデル改良。2. 気候影響が開発速度に及ぼす影響の包括的整理ならびに主要影響の定量化戦略の検討。3. 気候影響予測出力データならびに簡易影響予測手法の収集・整備。4. 大規模事象の最新研究知見把握とそれが各部門の気候影響に及ぼす潜在的作用の調査。5. 開発速度へのフィードバック影響を時間蓄積的に考慮した気候変動影響予測。
このうち、目標1は本研究の手法的根幹を成すものであり、社会経済変化、気候変化、気候影響、気候対策を整合的に扱うべくこれまで開発を進めてきた応用一般均衡モデルAIM/Hubについて、人口、資本、土地等の生産要素や技術関連変数への気候影響の時間蓄積の効果を考慮できるよう、モデル拡張を行う。目標2については、目標1でのAIM/Hub改良の側方支援の位置づけを有している。気候影響については、農業、水資源、健康といった部門区分が可能だが、さらに、短期の急性的影響(例:ある年に干ばつで作物収量や品質が低下しても翌年に天候がもとに戻れば収量や品質は平常年の水準を期待できる)もあれば、将来にわたりその影響を引きずること(例:洪水により壊滅的被害を受けた地域では生産資本が損傷し継続的に生産性低下が懸念される)もある。部門別の気候影響の経済費用推計では急性的影響のみが注目されがちだが、包括的整理を通じてその見落としを回避し、さらに目標1のAIM/Hub改良にその知見を反映させる。目標3については、目標2で包括的整理を実施した各影響に関して、目標1のAIM/Hubに実装するために必要な気候影響予測データと簡易影響予測手法の収集整備を行う。より具体的には、全球規模での気候影響予測の国際モデル相互比較評価に集積されている気候影響予測情報について、目標2の包括的整理をふまえたデータ収集と整備を行う。また、本研究でも、熱ストレス死亡、労働生産性低下、冷暖房エネルギー需要変化については、これまでの研究で培った手法群を活用して影響予測実験を独自に実施することが可能であことから、一部の影響部門については簡易影響予測手法の開発に必要な感度解析を実施する。目標4については、本研究では理学的アプローチでの海洋大循環停止や南極氷床崩壊などの大規模事象の現象理解は扱わないが、外力変化の
ドライバーとなる大規模事象に関する最新知見とそれが各部門の気候影響に及ぼす潜在的作用について、文献調査に基づく定性的な検討と整理を実施し、その出力を目標2の検討材料として提供する。目標5では、目標1の拡張AIM/Hubモデルを使い開発速度へのフィードバック影響を蓄積的に考慮した気候変動影響予測を実施し、本課題で設定した学術的問いへの回答に取り組む。
今年度の研究概要
気候影響が開発速度に及ぼす影響の整理と主要影響の定量化戦略の検討、気候影響予測出力データや簡易影響予測手法の収集・整備、大規模事象が各部門の気候影響に及ぼす潜在的作用の調査に着手する。
外部との連携
本課題には、京都大学工学研究科藤森真一郎教授が研究分担者として参加する。