- 予算区分
- 基盤C
- 研究課題コード
- 2426CD007
- 開始/終了年度
- 2024~2026年
- キーワード(日本語)
- ネットゼロ,公平性,努力分担,CO2除去,残余排出
- キーワード(英語)
- net zero,fairness,effort sharing,CO2 removal,residual emissions
研究概要
パリ協定以降、人為的な温室効果ガスの排出と吸収をバランスさせる「ネットゼロ目標」を新たな政策目標として掲げる動きが世界各国で急速に普及している。しかし、経済発展レベルや歴史的排出といった点で各国が担うべき責任や能力の違いをどのように国別のネットゼロ目標にフェアに反映させるべきかについてはいまだ多くの課題がある。本研究では、国別のネットゼロ目標の倫理的・政策的妥当性を公平性の観点から検証し、よりフェアな目標設定に向けた政策枠組みを提示することを企図する。公平性原則の理論枠組みを構築し、ネットゼロ目標の達成時期やCO2除去による残余排出の相殺の責任分担のあり方を複数の公平性の観点から検証する。
研究の性格
- 主たるもの:政策研究
- 従たるもの:基礎科学研究
全体計画
本研究では、国別のネットゼロ目標の倫理的・政策的妥当性を公平性の観点から検証し、よりフェアな目標設定のあり方を探究するために、以下の三点に取り組む。
(1) 排出削減の努力分担をめぐる公平性の倫理規範の理論的な検討
(2) 異なる公平性原則からの各国のネットゼロ目標の是非の検討
(3) CO2除去による残余排出の相殺のフェアな責任分担のあり方の検討
まず一年目に実施項目(1)の内容に取り組み、その後二年目以降に実施項目(2)(3)の内容に段階的に移行する。各国の努力分担の公平性原則については、大まかに五つの原則(責任、平等、能力・ニーズ、コスト効率性、既得権)が既存研究で提示されており、これら異なる原則の組み合わせや重み付けによって公平性の意味の内実は変容する。また、先進国や途上国によって重視する原則も異なる。そこで、実施項目(1)ではまず、既存研究レビューを基に公平性原則の概念を整理し、異なる公平性の規範によってネットゼロ目標のあり方がどのように異なりうるのかの理論的枠組みを構築する。次に、実施項目(2)(3)では、公平性原則の理論枠組みを実際の国別ネットゼロ目標に適用して、各国の目標設定のあり方の妥当性を検証する。その際、具体的な評価項目として「ネットゼロ目標の達成時期」と「CO2除去による残余排出の相殺量」に着目する。これは、目標達成年とCO2除去の割合が各々において先進国と途上国の間の責任分担を考える際に重要な政策的な論点となるからである。以上の研究結果を踏まえて、最後にはよりフェアな目標設定のあり方についての政策枠組みの提示を目指す。調査方法としては、関連する学術論文・政策文書・報告書などを網羅的にレビューする文献調査を基本とし、社会科学の定性的なテキスト分析手法である言説分析や類似する分析手法を用いて作業を進める。この他、文献調査を補完するために当該分野の専門家・政策決定者へ聞き取り(インタビュー)調査も必要に応じて行う予定である。
今年度の研究概要
上記全体計画の実施項目(1)の内容に主に従事する。既存研究レビューを基に公平性原則の概念を整理し、異なる公平性の規範によってネットゼロ目標のあり方がどのように異なりうるのかの理論的枠組みを構築する。
課題代表者
朝山 慎一郎
- 社会システム領域
経済・政策研究室 - 主任研究員