統合研究プログラム
(課題解決型研究プログラム)(平成28~令和2年度)
国立環境研究所研究プロジェクト報告 SR-152-2025
本報告書は、2016年度から2020年度までの5年間にわたって国立環境研究所第4期中長期計画の課題解決型研究プログラムとして実施した「統合研究プログラム」の研究成果をとりまとめたものです。
この研究プログラムが開始される前年の2015年は、9月に国連総会において持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals; SDGs)が中核となっている「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され、12月にはパリで開催された気候変動枠組条約のCOP21において、世界の平均気温上昇を工業化以前に比べて2℃より十分低く保つとともに1.5℃に抑える努力を追求する「パリ協定」が採択されるなど、持続可能な社会や脱炭素社会の実現に向けて大きな転換となった年でした。その翌年にはじまった「統合研究プログラム」では、様々なスケールを対象に、社会、経済の課題と、低炭素、資源循環、自然共生等の環境の課題を統合的に解決する持続可能な社会の実現を目指した研究に取り組んできました。
プロジェクト1では、世界や国を対象とした統合評価モデルの開発を通じて持続可能シナリオの開発をおこなってきました。特に国別の低炭素(のちに脱炭素)シナリオの開発については、低炭素研究プログラムのプロジェクト3と連携して研究を進めてきました。
プロジェクト2では、地域を対象に気候変動の緩和策・適応策に加えて、地域活性化などの環境、経済及び社会の観点から、持続可能社会の統合的ロードマップ開発に取り組んできました。2018年には国立環境研究所に気候変動適応センターが新たに設けられ、気候変動影響・適応策も踏まえた総合的な取組が求められるようになり、この課題も貢献してきました。
プロジェクト3では、持続可能な社会の実現方策を、地域や生活のデザインと政策・法制度の評価の観点から明らかにしてきました。
本研究プログラム期間中の2018年に気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の『1.5℃特別報告書』が公表され、2020年には菅義偉内閣総理大臣(当時)が所信表明演説において、「日本が2050年までにカーボンニュートラルを目指す」と宣言するなど、日本を含めた世界が低炭素社会から脱炭素社会の実現に向けて大きく舵を切った時期でもあり、そうした議論にもこのプロジェクトの成果は大きく貢献してきました。
2021 年度に開始された国立環境研究所第5 期中長期計画では、統合研究プログラムで行った研究をさらに発展させ、世界から国を対象とした脱炭素・持続社会研究プログラムや、地域の社会課題にも向き合う持続可能地域共創研究プログラム等へと引き継がれています。待ったなしの持続可能社会や脱炭素社会の実現に向けて、さらに大きな貢献ができるよう尽力して参ります。一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。