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脱炭素・持続社会研究プログラム(令和 6年度)
Decarbonized and Sustainable Society Research Program

研究課題コード
2125SP060
開始/終了年度
2021~2025年
キーワード(日本語)
脱炭素社会,持続可能社会,ロードマップ,統合評価モデル,世代間衡平性
キーワード(英語)
Decarbonized society,Sustainable society,roadmap,Integrated assessment model,Intergenerational equity

研究概要

持続可能な社会の実現に向けたビジョン・理念の提示、ビジョン・理念の実現に向けた研究、気候変動の緩和策に係る研究に取り組む。具体的には、世界からアジアを中心とした国レベルを対象に、脱炭素で持続可能な社会を実現する中長期的なロードマップの開発を行う。
これらの取組により、脱炭素で持続可能な社会を実現するための長期的な要件を地球規模で明らかにするとともに、それを実現するためにアジアを中心とした国レベルで必要となる取り組みや制度を、現状の多様な発展段階や世代間衡平性も踏まえて定量的、叙述的に明らかにし、脱炭素で持続可能な社会の実現に向けた取り組みの支援に貢献する。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:政策研究

全体計画

本研究プログラムは、PJ1:地球規模の脱炭素と持続可能性の同時達成に関する研究、PJ2:国を対象とした脱炭素・持続社会シナリオの定量化、PJ3:持続社会における将来世代考慮レジームの構築、のプロジェクトで構成されている。
PJ1については、経済活動の違いによるエネルギー・サービス需要変動、技術的革新やロックインによる対策普及見通しやパリ協定の実現に向けた金融等の国際制度導入等の効果、影響を定量的に明らかにするために、3年終了時までに技術選択モデルを核とした緩和策評価モデル群を世界規模で構築し、5年終了時には短期・中期の温室効果ガス(GHG)・短寿命気候強制因子(SLCF)の排出経路やこれらのガスの大幅削減策による経済活動への影響を定量的に評価する。また、全球を対象とした応用一般均衡モデルを核とした分析では、3年終了時までに持続可能性指標評価モデル等を構築し、5年終了時にはパリ協定に整合的な多様なGHG排出経路の提示、同排出経路に要する緩和策の持続可能性への波及影響の分析、同排出経路の下での気候影響とその不公平性について明らかにする。さらに、地球システムモデル(ESM)と統合評価モデル(IAM)をリンクした「地球システム統合モデル」を3年終了時までに構築し、5年終了時には構築したモデルを活用し、気候・炭素循環と人間活動の相互作用を分析するとともに、地球システムのティッピングエレメントの理解を深め、地球規模の環境・資源制約について論じる。
PJ2については、日本を対象に、革新的省エネ技術、電力系統システム等のエネルギー需給対策に伴うGHG大幅排出削減や、少子高齢化や都市・農村の偏在化による需要変動や対策導入への影響、行動変容を促す革新的技術(IoT, AI)、民間企業のESG投資、金融市場の施策等の需要変動への効果を評価するためのIAMの開発とそれらを用いた将来シナリオの定量化を3年終了時までに行う。また、アジア主要国等を対象に、各国が注目する脱炭素化以外の環境課題(大気質、廃棄物処理等)を考慮し、アジアの多様性(経済移行国・開発途上国別の経済発展の差異、同一国内の地域や主要排出部門の差異、長期発展戦略策定にむけて各国が抱える制度的・技術的課題など)を分析できるIAMの開発を行い、それらを用いた将来シナリオの定量化を3年終了時までに行う。5年終了時には、国別シナリオとパリ協定のギャップを埋める、対策・施策・制度の提言を行う。
PJ3については、3年終了時までに世代間衡平性および関連する規範の概念整理を行い、脱炭素社会の実現や環境問題の具体事例に適用しつつ、これら規範の再検討とリフレーミングを行う。5年終了時には、環境倫理学や厚生経済学など関連分野における知見も取り込みながら、負の資産、地球規模での制約や強い持続可能性、世代間衡平性等を考慮して、ポストSDGsや包括的富をはじめとする持続可能性指標の再検討を行う。また、世代間の意見/価値観のギャップとその要因や世代的な立場を交換した際の認識等の調査から、世代間の考え方の違いと共通点ならびに立場転換の可能性を3年終了時までに理解し、5年終了時には世代間の意見の違いを尊重しつつ意思決定するための手続きや既存の手続き等における考慮事項を検討する。
これらの取組により、脱炭素で持続可能な社会を実現するための長期的な要件を地球規模で明らかにするとともに、それを実現するためにアジアを中心とした国レベルで必要となる取り組みや制度を、現状の多様な発展段階や世代間衡平性も踏まえて定量的、叙述的に明らかにし、中長期的なロードマップとしてとりまとめ、脱炭素で持続可能な社会の実現に向けた取り組みの支援に貢献する。

今年度の研究概要

PJ1では、早期大幅削減に向けた緩和策や需要変動策などによる脱炭素と大気質改善等の相乗・相殺効果を評価し、実現可能性や地域偏在性を検討する。気候目標想定に応じ、GHG排出経路、緩和費用、気候影響、貧困・飢餓・生物多様性などの持続可能性指標を定量的に評価出来るモデル分析枠組みを構築する。将来予測実験を行い、ティッピングエレメントなどに着目し、地球—人間システムの長期応答について定量的な評価を行う。
PJ2では、日本を対象とした脱炭素社会の実現に向けたロードマップにおいて必要となる対策、施策、制度等を明らかにする。アジアにおける脱炭素シナリオの定量化に向けて、国別・部門別の対策ポテンシャルや、脱炭素化と他の環境問題との相乗・相殺効果の評価、および対策導入等の課題を整理する。
PJ3では、規範評価枠組みに時間軸を加えて枠組みを更新し、社会的トランジション下で生じる規範的論点を整理する。二酸化炭素排出を統合する持続可能性指標について、排出ベースでの算出方法と被害ベースでの算出方法の理論面・実証面での比較を行う。前年度のつくば気候市民会議と意識調査結果の分析を行い、将来世代考慮制度の制度が実現しようとする役割などに着目して類型化を行う。将来世代考慮制度等に関する政策提言案をまとめる。

課題代表者

増井 利彦

  • 社会システム領域
  • 領域長
  • 博士(工学)
  • システム工学,土木工学,経済学
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担当者