環境知覚研究の勧め
- 好ましい環境をめざして
環境儀 NO.25
外界と人間の心の関係を解明する研究は、環境問題を解決する上で欠かせない重要な鍵となります。
人間が存在しなければ、そこには自然現象・物理化学現象(外界)があるだけです。人間がいるからこそ、環境が生まれます。環境という概念が生まれるのは人間の存在である以上、環境問題の解決にあたっては、人間が外界に対して何を感じるのか、何と考えるのか、という「基盤」にあたる部分を解明することが不可欠です。
身体的健康の面以外にも心理的快適性の面でも重要性が増した環境問題を解決する鍵となるのが、環境知覚です。知覚感覚器官を使って外界を捉え、捉えた情報を基に環境を判断する環境知覚は数万年の間、人類の生存を導いてきました。このような機能の研究は、環境の判断が人によって異なるのはもちろん、同一人物でも時間によって異なるため、信頼できるデータを得るには長時間にわたる実験と分析を必要とします。
国立環境研究所の青木陽二主席研究員は30年にわたり、この環境知覚を研究テーマにしてきました。霞ヶ浦での環境知覚実験に始まり、その過程で風景評価の分析へと軸足を移しながら、外界と人間の心の関係(これを、ここでは環境と考えます)を解明する試みを、いまも連綿と続けています。
本号では、30年にわたる環境知覚、風景評価の分析のあゆみを紹介いたします。