論文情報
(Design and Management of the Climate Assembly Tsukuba 2023)
著者:松橋啓介, 徳田太郎, 村上千里, 尾上成一
掲載誌:土木学会論文集, 80(26), 2024. (2024.9.30受理)
キーワード
市民会議、ゼロカーボン、基礎自治体、ミニ・パブリックス、市民参加
論文の紹介
脱炭素社会への転換を実現するためには、供給者側の技術開発と導入だけでなく、消費者側の行動転換とその転換を促すしくみが同時に必要です。そのため、気候市民会議を通じて、広く受け入れ可能な脱炭素化のしくみを明らかにすることが有用です。
そのため、まず、自治体の気候市民会議の国内4事例と英国2事例を比較・整理し、それぞれの良い特徴や国内事例に共通する課題を明らかにしました。次に、これを参考にして、つくば市を対象に、現時点での国内で最良の気候市民会議を目指した詳細設計を行い、実施しました。
市と研究機関等との緊密な連携を通じて、提言を政策に反映する約束を事前に行うことができました。これに加えて、謝礼額を増やしたこともあり、類を見ないほど多くの参加申し込み者を得ることができました。性別、年齢、居住地区に加えて、気候変動問題への関心についてもバランスを取ったミニ・パブリックスを構成することにつながりました。
また、広く多様な意見を収集するためアイデア公募の機会を設けたこと、行動の転換としくみの転換の双方を考えたこと、情報提供は枠組み1名と各論数名で分担したこと、意見交換の時間を増やしたことなどの工夫により、市民の意見を十分に踏まえた74の提言が得られました。
その後、ゼロカーボンで住みよいつくば市の実現に向けて、提言書実現のロードマップが作成されています。引き続き、地球温暖化対策地方実行計画にも盛り込み、実現を促すことが重要です。また、自治体版の気候市民会議の設計と運営に係る工夫を国内外に共有するとともに、各事例の提言を比較整理して共通点と地域固有の特徴とを明らかにすることも課題です。

(licensed under CC BY-NC-ND 4.0)