気候変動から生き物を守る
自然生態系分野の適応研究
国立環境研究所「環境儀」第81号の刊行について
(筑波研究学園都市記者会、環境記者会、環境省記者クラブ同時配付)
2021年6月29日(火) 国立研究開発法人国立環境研究所 編集分科会委員長 :江守 正多 〃 事務局(環境情報部情報企画室) 室長 :下前 雅義 担当 :白井 大智 |
「気候変動から生き物を守る 自然生態系分野の適応研究」を刊行します。
産業革命以降の人間活動は自然の姿を大きく変化させました。大雨・強い台風による甚大な被害や熱中症の増加など気候変動の影響は、身近なところに様々な形で現れています。さらに、様々な生物の生息環境やその種にも影響が及んでいます。
国立環境研究所では、気候変動適応センターを設置して、気候変動の影響による被害の回避・軽減対策(適応策)に関する研究や情報提供を進めています。
本号では、センター内の気候変動影響観測研究室の活動に焦点を当て、海、森林、湿地など多様な生態系を対象とした野外調査・解析で明らかになった、気候変動の生態系への影響を解説するほか、海洋沿岸における熱帯化のメカニズムなどについて紹介します。

1 本号の内容
日本における気候変動に伴う自然生態系の変化は、様々な場所や種において報告されています。
陸域では、高山植生の衰退、森林植生移行帯における種の入れ替わり、ウメやサクラの開花の早期化、虫媒植物の結実率低下など、海域では、暖水性の種の増加やサンゴの白化、植食性魚類の北上とそれに伴う藻場の衰退などが報告されています。
このような気候変動が自然生態系に及ぼしてきた影響を検出するため、国立環境研究所が行なっている野外調査や統計解析について解説するほか、自然生態系の将来変化を予測する研究を紹介します。
○Interview研究者に聞く「生態系への気候変動の影響を探る」
海、森林、湿地それぞれの生態系に起きている影響や過去のデータと照らし合わせる重要性について研究担当者らの話を紹介するほか、生物の進化と絶滅、気候変動影響の観測と検出、生物多様性の保護・保全を目的とした生息環境のアプローチなどについて解説します。
<研究担当者>
西廣 淳(にしひろ じゅん)
気候変動適応センター気候変動影響観測研究室 室長
熊谷 直喜(くまがい なおき)
気候変動適応センター気候変動影響観測研究室 研究員
小出 大(こいで だい)
気候変動適応センター気候変動影響観測研究室 研究員
Kim JiYoon(キム ジユン)
気候変動適応センター気候変動影響観測研究室 特別研究員
○Summary
「海洋沿岸域の熱帯化」
海藻藻場(かいそうもば)は世界各地の温帯沿岸域で分布範囲が急速に縮小しており、代わりに造礁サンゴ群集が分布を拡大しつつあります。海藻からサンゴが多い熱帯の海へと変化する「海の熱帯化」は、海藻を食害する魚類等や、これらを運ぶ海流が関係していると考えられてきましたが、これまでそれらの関係を総合的に解明した研究はありませんでした。
そこで、国立環境研究所では国内における藻場からサンゴ群集への置き換わりの全体像を把握し、気候変動と海流輸送、魚類の食害による海藻の減退の影響を組み込んだ解析研究を始めました。Summaryでは、海藻藻場からサンゴ群集への置き換わりが進行するメカニズムの解明について紹介します。
○研究をめぐって
「自然環境分野での気候変動適応の潮流」
国内外における気候変動の生物への影響とその研究の動向や、国立環境研究所が研究を進めるなかで生物の将来予測に不可欠な、過去の自然史情報の活用とその重要性について紹介します。
2 環境儀81号紹介動画
国立環境研究所YouTubeチャンネルで、環境儀81号の紹介動画を公開しています。
URL:https://youtu.be/X7AgSHmkgvk【外部サイトに接続します】
3 国立環境研究所動画チャンネル
URL:https://www.youtube.com/user/nieschannel【外部サイトに接続します】
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本号掲載URL
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国立環境研究所 環境情報部情報企画室出版普及係
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