
GOSAT-GWデータ検証のためNASAと共同観測を実施します
—大都市東京の温室効果ガス排出源を上空から観測—
(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会、文部科学記者会、科学記者会、静岡県政記者クラブ同時配付)
1. 研究の背景と目的
国立研究開発法人国立環境研究所(NIES)は、環境省および国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)とともに、気候変動に関する科学の発展、気候変動政策・取組評価への貢献を目的に、温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)シリーズを活用し、大気中の温室効果ガスの観測をしています。GOSATシリーズの3号機である温室効果ガス・水循環観測技術衛星「いぶきGW」(GOSAT-GW)は、2025年6月29日1時33分(日本標準時)に打ち上げられ、同衛星に搭載されている「温室効果ガス観測センサ3型(TANSO-3)」では、主要な温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)とメタン(CH4)、さらに大気汚染物質である二酸化窒素(NO2)を観測しています。なお、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、「温室効果ガス・水循環観測技術衛星による二酸化窒素濃度観測に関する導出アルゴリズムの開発、データ処理系の構築、プロダクト検証体制の構築及びデータの利活用研究」の枠組みでNIESと共同で研究開発を進めています。
衛星観測で得られたデータが科学的に利用されるためには、その不確かさ(ばらつきやバイアス)を明らかにする検証が不可欠であり、そのためには、地上観測や航空機観測などによって独立で得られた、より高い精度のデータを使用します。「Tokyo-Field Campaign(TOKYO-FC)」は、「日・米宇宙協力に関する枠組み協定」に基づく実施取り決め」」の枠組みに基づいており、TANSO-3プロダクトを検証・評価し、全球大気組成のモニタリングや、排出量の算出に必要な精度を満たしていることを確認することを目的とする国際的な航空機観測です。
2. 検証方法
GOSAT-GWは地上約666 kmの高度を飛行し、3日間で全球を観測します。GOSAT-GWに搭載されているTANSO-3には、広域観測モード(全球を900 km 以上の幅、10 kmの空間分解能で面的に観測)と精密観測モード(都市域などを90 km以上の幅、1〜3 kmの空間分解能で面的に観測)の2つの観測モードがあります。TOKYO-FC期間中(2026年3月7日から31日)は、TANSO-3の精密観測モードで東京や大阪をはじめとする都市など日本各地の温室効果ガス大規模排出源の詳細な観測を行います。NASAと日本(NIESおよびJAMSTEC)の2機の航空機は、富士山静岡空港を拠点とし、TANSO-3による観測が行われる地域まで共に移動し、水平・鉛直方向の観測を行います。
King Air(NIESおよびJAMSTEC)
NIESとJAMSTECは、「King Air 200T」(ダイヤモンドエアサービス(株))を使用します。King Airに設置された吸入口から機外の大気を直接採集するとともに、温室効果ガスなどが固有の波長の光を吸収する性質を利用して、温室効果ガスの濃度やカラム量を算出する分光計を搭載してCO2、CH4、NO2等を測定し、大規模排出源から排出された温室効果ガスが拡散する様子の詳細な水平・鉛直分布の取得を目指します。
G-III(NASA)
NASAは、「Gulfstream-III(G-III)」を使用します。G-IIIには、分光計が2台搭載されており、CO2、CH4、NO2を測定します。
3. 今後の展望
TOKYO-FCで得られたデータは、NO2のカラム量注釈1およびCO2とCH4のカラム平均濃度注釈2を含むTANSO-3のレベル2プロダクトの精度を評価するために用いられます。レベル2プロダクトの一般公開は、2027年春を予定しており、CO2の全大気月別平均濃度の監視、国別人為起源温室効果ガス排出量の検証、温室効果ガスの大規模排出源のモニタリングのようなミッションに使用されます。
4. 注釈
1. カラム量
気体の総量を単位面積当たりの地上から大気上端までの柱(カラム)の中にある気体分子の数で表した数値。
2. カラム平均濃度
乾燥空気のカラム量に含まれる温室効果ガスのカラム量の割合。
5. 参考
-
Tokyo - Field Campaign
https://espo.nasa.gov/tokyo-fc(外部サイトに接続します) -
NIES GOSAT-GW Project
https://gosat-gw.nies.go.jp/en/ -
報道発表「温室効果ガス・水循環観測技術衛星(GOSAT-GW、「いぶきGW」)の打上げとクリティカル運用期間の終了について」
https://www.nies.go.jp/whatsnew/2025/20250701/20250701.html -
報道発表「いぶきGW」(GOSAT-GW)搭載温室効果ガス観測センサ3型(TANSO-3)の初観測について」」
https://www.nies.go.jp/whatsnew/2025/20250808/20250808.html -
報道発表「「いぶきGW」(GOSAT-GW)搭載温室効果ガス観測センサ3型(TANSO-3)による観測データ(精密観測モード)の初解析結果について」
https://www.nies.go.jp/whatsnew/20260108/20260108.html
6. 発表者
本報道発表の発表者は以下のとおりです。
国立研究開発法人国立環境研究所 地球システム領域
領域長 谷本 浩志
環境省 気候変動観測研究戦略室
室長 永森 一暢
国立研究開発法人海洋研究開発機構 地球表層システム研究センター
センター長 金谷 有剛
アメリカ航空宇宙局 ラングレー研究所
研究員 Laura Judd
7. 問合せ先
【内容に関する問合せ】
国立研究開発法人国立環境研究所 地球システム領域
衛星観測センター 主任研究員 岡本 祥子
【報道に関する問合せ】
国立研究開発法人国立環境研究所 企画部広報室
kouhou0(末尾に”@nies.go.jp”をつけてください)
国立研究開発法人海洋研究開発機構 海洋科学技術戦略部 報道室
press(末尾に”@jamstec.go.jp”)をつけてください)
環境省 地球環境局 総務課 気候変動観測研究戦略室
室 長:永森 一暢
室長補佐:石原 博成
担 当:小西 利幸
chikyu-kansoku(末尾に”@env.go.jp”をつけてください)


