二酸化炭素収支を観測する
森林
森林では、植物が光合成によって二酸化炭素(CO2)を吸収すると同時に、植物自体や土壌中の微生物群が、呼吸によってCO2を放出しています。 この吸収から放出を差し引いた量が「正」の場合には、森林は待機からCO2を吸収したことになります。
この森林のCO2吸収が、地球温暖化の主因とされる大気中のCO2の濃度上昇を抑制することから、現在、世界のさまざまな森林でCO2吸収能力の観測が行われています。 当研究所では、2000年より北海道苫小牧市西方に広がるカラマツ林(写真)で、森林のCO2吸収能力を観測してきました。(※)
カラマツは冷温帯から亜寒帯に成育する落葉針葉樹です。このカラマツ林の中央に高さ四十二メートルの観測塔を建設し、風向・風速とCO2濃度変動を計測することにより、森林と大気間のCO2収支(吸収/放出)を連続的に観測します。
その一年間の変化を下図に示しました。数値は森林と大気間のCO2収支量を炭素量として示しており、「+」が森林生態系からの放出、「-」が森林生態系への吸収になります。
森林のCO2収支は、植物の生理活性や土壌有機物の分解と密接な関係があります。積雪のある冬期は、植物の光合成はゼロであり、植物・土壌の呼吸による少量のCO2放出だけが続きます。
四月中旬の雪解け後、CO2収支は逆転します。林床植物の芽吹きとカラマツの開葉によって、光合成によるCO2吸収が急激に増加し、6月に最大となります。
7、8月には植物の成長に伴う光合成によるCO2吸収が増加しますが、一方で、植物量の増加と気温の上昇が植物・土壌の呼吸によるCO2放出も大きく増加させるため、総量では吸収が減少します。
その後、落葉期になると光合成によるCO2吸収が減少し、十月下旬には植物・土壌の呼吸によるCO2放出がまさり、森林全体では少量の放出に転じます。
一年間の合計で見ると、カラマツ林が吸収したCO2は炭素に換算して3~4トン/ha/年となりました。この値は、観測手法や計算方法による誤差が含まれており、今後の詳細な解析結果によっては、変動する可能性があります。
森林は私たちの社会活動から大量に放出されるCO2の吸収源です。その吸収能力を高めること、つまり森林の育成・管理を行うことが、地球温暖化の抑制のためにも重要なことです。
【地球環境研究センター 研究管理官 藤沼康実】
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