温暖化の原因物質を観測する
二酸化炭素
今年二月に発効した地球温暖化防止の国際約束「京都議定書」には、わが国の温室効果ガスの削減目標が2008~2012年の平均排出量を1990年値に比べ6%削減することとしています。 これらの温室効果ガスが、地球上のどこにどのくらい存在するのか、温室効果ガスの挙動を精密に調べることが、温暖化防止対策を考える上での基本的なデータになります。
そのために、各国が協力し合って地球規模での温室効果ガス濃度を体系的・継続的に観測しています。 当研究所でも、わが国の南北端の沖縄県八重山諸島波照間島と北海道根室半島落石岬に無人観測局(図1)を設置し、温室効果ガスのベースライン濃度(人為的な影響を無視できる清浄な大気濃度)の高精度・自動観測を進めています。
ここでは、温室効果ガスの中でも、その影響が大きく、大幅な排出の削減が問われている二酸化炭素(CO2)の観測結果を紹介します(図2)。CO2濃度を継続的に観測することにより、さまざまなことがわかります。
たとえば、両観測局ともにCO2濃度が春先に高くなり、初秋に低くなる振幅を繰り返しながら、少しずつ上昇しています。 その振幅は、北の落石岬のほうが南の波照間島より大きくなっています。この原因は、陸域の植物活性(光合成)の季節変化によるもので、その強さも、位置する緯度帯が海域に比べ陸地の割合が大きい落石岬の方が、強くなっています。
さらに、この現象は北半球特有のものです。南半球では季節が北半球と逆転していることにより、振幅の周期が半年ずれ、かつ、振幅の大きさも南半球は海域の割合が大きいために小さくなっています。
現在、両観測局のCO2の年平均濃度は380ppmに達しつつあります。産業革命以前は280ppm前後で推移していましたが、化石燃料がエネルギー源として利用され、人間活動が活発になるにつれて急激に増加しており、最近では約1.5~1.6ppm/年で上昇しています。 このCO2濃度の上昇は、人間活動の結果排出され、地球という一つの生態系が循環(吸収)しきれなかったCO2が大気中に増加している量です。
この増加量をいかに削減するか?いま私たちは、ライフスタイルの変革を含め問われています。
【地球環境研究センター 研究管理官 藤沼康実】
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