処分後に土に還るのか?
ゴミ(3)
家庭生活や事業所、工場などから出たごみは、資源を回収したり、焼却して量を減らしたり、有害なものを無害化する処理を行った後で、最後は陸地や海に設けられた最終処分場に埋め立てられます。
2002年度に発足した一般廃棄物(家庭や小規模な事業所などからのごみ)5,161万トン、産業廃棄物(工場や建設現場などからのごみ)3億9,300万トンのうち、それぞれ903万トン、4,000万トンが最終処分されました。
ごみを埋め立てた後、ごみに含まれていたものや、ごみが分解したものが、染みこんだ雨水に溶け込んで汚水(浸出水)が発生します。汚い浸出水が発生するようなごみを埋め立てる処分場では、浸出水が周りへ漏れるのを防ぐ構造になっており、浸出水は集めて浄化された後に、河川などに放流されます。
また念のため、周辺の地下水を定期的に検査して、浸出水が漏れていないことを確認しています。このような最終処分場の維持管理は、ごみを埋め終わった後も、浸出水がきれいになるまで続けられます。
さて、浸出水はいつきれいになるのでしょうか。最後にごみは土に還るのでしょうか。これは、私たちがいつまで待てば安心できるのかということだけではなく、ごみを処理・処分するためにどれくらいお金がかかるのかという問題にもつながっています。
埋め立てたごみが時間をかけて環境に影響を与えなくなっていく過程を、研究者は「安定化」と呼んでいます。安定化が終わるまでどれくらい時間がかかるのか、その間にどの物質がどれくらい発生するのか、最後にごみは何に変わるのか、安定化を早く進めるにはどうしたらよいのか、などさまざまな研究が世界中で行われています。
埋め立ては世界中どこにでもあるごみの処分方法ですが、安定化が生物学や化学や物理学がかかわる複雑な現象であること、数十年から数百年かかる現象であるため実験しにくいこと、また、ごみの種類や処分場の作り方、さらに処分場がさらされる気候は、国ごとに、あるいは国内でも千差万別なので、世界で共通する理論を作りにくい分野です。
ごみは土に還るのか、に正直なところまだ答えはありません。国立環境研究所では、世界的に共通であるごみの処分方法に関する課題を一つ一つ解き明かし、日本のみならず世界の処分場が安心できる施設となるよう、日夜研究を行っています。

【循環型社会形成推進・廃棄物研究センター 最終処分技術研究開発室 主任研究員 山田正人】
- 研究最前線
- ふしぎを追って
- 市民と研究者と環境
- 私たちと話しませんか「環境の研究」
- 生物多様性(6)「国道沿いに咲くアブラナ」
- 生物多様性(5)「日本の自然は侵入種だらけ」
- 生物多様性(4)「ダムによる河川の分断の影響」
- 生物多様性(3)「レッドデータブックを知ってますか?」
- 生物多様性(2)「珍しい生き物ってどんな生き物?」
- 生物多様性(1)「大陸移動で生じた?」
- 越境する大気汚染(4)「広域大気汚染のシミュレーション」
- 越境する大気汚染(3)「黄砂を計る」
- 越境する大気汚染(2)「酸性雨の話」
- 越境する大気汚染(1)「広域大気汚染と観測」
- 魚類生息地ポテンシャルマップ「魚の棲みやすい川を考える」
- 水と土(3)「東京湾の現状、増水と影響」
- 水と土(2)「水処理技術、うまく生かせるか?」
- 水と土(1)「黒ボク土 人が作った土?」
- オゾン層(4)「南極でのオゾン破壊はなぜ?」
- オゾン層(3)「人工衛星がとらえた推移」
- オゾン層(2)「20年で進んだ破壊」
- オゾン層(1)「何がおきているか調査」
- ゴミ(7)「PCBをなくす」
- ゴミ(6)「再生品の安全性を考える」
- ゴミ(5)「リサイクル社会の身近な循環技術」
- ゴミ(4)「水素エネルギーを作り出す」
- ゴミ(3)「処分後に土に還るのか?」
- ゴミ(2)「不法投棄を空から捉える」
- ゴミ(1)「日本での流れを追う」
- 摩周湖「汚染の超高感度検出器」
- 森林「二酸化炭素収支を観測する」
- 二酸化炭素「温暖化の原因物質を観測する」
- モニタリング「施策を目ざした観測」
- 温暖化(5)「洋上風力発電の可能性をさぐる」
- 温暖化(4)「京都議定書以降に見えるもの」
- 温暖化(3)「炭素税は対策として有効か?」
- 温暖化(2)「暑く悪天候で大雨増える」
- 温暖化(1)「深刻化するその影響」
- 花粉症(3)「予防するには」
- 花粉症(2)「なぜこんなに増えているのか?」
- 花粉症(1)「症状を悪化させるもの」
- ココが知りたい地球温暖化
- CGER eco倶楽部
- 環環kannkann
- リスクと健康のひろば
- 環境展望台
- 環境展望台「環境技術解説」
- 環境展望台「探求ノート」
- 国立環境研究所動画チャンネル