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2005年8月17日

水素エネルギーを作り出す

ゴミ(4)

 「ゴミ」というと普通はいらなくなったもの、価値のないものとみなされますが、化学的には石油など有用な物質と同様に炭素や水素などの元素からできています。 ならば、ごみを資源と考え、ごみから水素をとり出して利用できるはず、というのが私たちの発想です。
 水素は以前から、水の電気分解などの方法で製造されていますが、このような方法に加えて最近、新しい方法が検討されています。水素を空気中の酸素と化学反応させて発電する燃料電池が、新しいエネルギー交換システムとして注目されているからです。
 燃料電池は、発電の効率が良く省エネに結びつくことや、発電時に環境を汚さないことなどが特徴ですが、水素製造に多くのエネルギーを使っては結局のところ、省エネには結びつきません。天然ガスなどに含まれるメタンを化学反応によって水素に改質するのが、現時点では水素を製造する確実な方法の一つです。
 「ゴミ」から「水素」を効率よく取り出すためのキーワードの一つは、微生物による発酵です。微生物には、生活するために酸素を必要とするタイプと、酸素を必要としないタイプがあります。後者は嫌気性菌と呼ばれ、有機物を食べて生きるためのエネルギーを得る一方、その過程でさまざまな物質を生成します。これを「発酵」といいます。生ゴミを食べて水素に変えたり(=水素発酵)、メタンに変えたりする発酵ができる微生物があることがわかっていますが、水素発酵はまだ実用化には達していません。
 私たちは、このような微生物の働きに着目し、メタンを発生させる方式に加え、直接水素を効率的に作る方式を研究し、ある特定の微生物が効率的に水素発酵を行う条件を明らかにしました。
 一方、ごみの中でも、廃木材などの乾いたごみについては、高温にすることでガスに変え、必要な成分に変換する技術を研究しています。木材ごみなどを600度以上に加熱することで成分を分解し、一酸化炭素や水素などを含むガスとして取り出すことができます。このガスに、水蒸気などをさらに反応させることで、化学的にガスの成分を変化させて、水素を高濃度に含むガスを作るのです。
 中世の錬金術師は金を生み出すことに成功しなかったのですが、近代科学につながる多くのことを発見しました。現代の科学技術は、ごみから上手に資源を回収し始めています。

バイオマス資源等からの水素エネルギーの生産システムの図

【循環型社会形成推進・廃棄物研究センター
バイオエコエンジニアリング研究室長 稲森悠平、適正処理技術研究開発室長 川本克也】

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