深刻化するその影響
温暖化(1)
地球の平均気温は過去百年に、0.6度上昇しました。主な原因は人間が石油や石炭などの化石燃料を大量に燃やして、二酸化炭素を大気中に出し続けてきたからです。温暖化はどんどん進んでおり、その影響が世界各地で表れてきています。このまま人間が化石燃料を使いつづけるならば、2100年には最大で約6度気温が上がると予測されています。
当研究所は温暖化研究プロジェクトの一環として、温暖化の影響がどこにでているのか(影響の検出)、今後温暖化が進むとどんな深刻な影響が表れるか(影響の予測)、そして影響を緩和するにはどんな対策をとったら良いか(適応策)について研究を進めています。
京都議定書が2月16日にやっと発効しましたが、その少し前に英国の気象局ハドレイセンター(気象研究所)で、「危険な気候変動を回避する」ための科学シンポジウムが開催されました。地球温暖化を議題の一つに7月に同国で開催されるG8・主要国首脳会議への情報提供に向け、最近の科学的知見をとりまとめるためでもあります。
シンポジウムでは、温暖化の影響がこれまで予測されていた以上に深刻であることが報告されました。北極海の氷や南極の棚氷が溶け続けていたり、生態系への影響が世界中で出ていることなど。
日本でも影響がすでに表れて、サクラの開花が早くなったり、チョウやセミなどが北へ生息範囲を拡大してます。昨年夏は猛暑、集中豪雨、10個の台風が上陸と、異常気象が頻発しました。昨年のこの異常気象と温暖化の関係については、まだはっきりしたことはわかっていませんが、気候モデルの研究から、温暖化が進むと異常気象の発生頻度や強度が変化することがわかっています。
東京・霞ヶ関では昨年、一日の最高気温が30度以上の真夏日が70日を記録し、つくばでも60日になりました。この猛暑によっていろいろな影響が表れています。熱中症患者の発生や光化学スモッグなど、健康にも影響が及びました。東京など都市部での一日の最高気温と熱中症患者の発生をみると、30度を越すと病院に搬送される患者が発生しはじめ、35度になると急激に増える傾向があると、わかりました(下図)。
これまで温暖化は徐々に進み、孫子の世代に深刻な影響が表れると予想していましたが、温暖化の初期の段階すなわち現在でも、異常気象の発生という形で、影響を与えることが懸念されています。2003年夏に欧州を襲った熱波では、フランスでは約15,000人が亡くなるなど大きな被害がでました。
温暖化の影響を的確に予測し、被害を緩和するための対応策を日本でも真剣に考える時がきているのでしょう。

【社会環境システム研究領域長 原沢英夫】
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