暑く悪天候で大雨増える
温暖化(2)
最高気温が30度を超える日を真夏日と言いますが、去年は日本各地で真夏日の日数の記録が更新されました。ついに地球温暖化が現実に起こり始めたと実感した人も多いでしょう。
しかし、一昨年の夏はとても涼しかったのです。覚えていますか?
温暖化は去年から急に起こり始めたのでしょうか?そんなことはありません。温暖化が問題になるずっと前から、日本には年によって暑い夏も来たし涼しい夏も来ました。暑い夏には、日本の南東の高気圧(太平洋高気圧)が大きく張り出し、梅雨がはっきりせず、晴れた日が何日も続きます。
涼しい夏には、太平洋高気圧が弱く、活発な梅雨前線が長い期間日本列島に留まり、天気が悪い日が多くなります。特に何十年かに一度、とても暑い夏が来たり、とても涼しい夏が来たりするのは「異常気象」と呼ばれますが、これは気候にもともと備わっている自然のゆらぎです。
我々は、温暖化がずっと進んだら、日本の夏がどうなるかを予測しました。神奈川県横浜市にある「地球シミュレーター」という世界最大級のコンピューターを使うことによって、詳しい予測を行うことに成功したのです。
この結果、温暖化が進むと、現在に比べて梅雨が活発で長引く年が多くなりそうなことが分かってきました。では現在よりも夏が涼しくなるのかというと、そうではありません。日本の周りの海は暖かくなっていますし、周りから吹き込んでくる風も現在よりも上がります。つまり、温暖化が進んだ場合の日本の夏は、一昨年のように天気が悪いのに、去年よりももっと暑い、ということになりそうです。
さらに、気温が上がると、空気中に含まれる水蒸気が増えます。雨は空気中の水蒸気を集めて降るので、温暖化すると、一回に降る雨の量が増えることになりそうです。集中豪雨や台風によって、洪水の危険性が増えることが心配されます。
温暖化が進むに連れて、気温はじわじわと高く、天気はじわじわと悪く、大雨はじわじわと増えていくはずです。が、実際には、一昨年と昨年のような大きな自然のゆらぎがこれに重ね合わさるので、このゆっくりとした変化は、はっきりとは感じられないかもしれません。
気がついた時には大変なことになっていた、ということの無いように、変化がおぼろげな現在のうちから、温暖化の進行を食い止めることを考えねばならないでしょう。
【大気圏環境研究領域 大気物理研究室長 江守正多】
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