不法投棄を空から捉える
ゴミ(2)
皆さんは産業廃棄物の不法投棄現場を見たことがありますか?
法律のルールを無視して廃棄物を道端、山林、田畑などに捨てることを不法投棄といいます。産業廃棄物の不法投棄現場では、大量の廃棄物が山のように積み上げられたり谷や穴に投げ込まれたりして、周辺の土壌や地下水が汚染されたり、廃棄物に火がついて燃えたりするといった深刻な問題が起きています。毎年数十万トン規模で、不法投棄が新たに発見されているのが日本の現状です。
では、茨城県で不法投棄が多いことはご存じですか。県内では過去10年間に約25万トンの不法投棄が発見されており、関東では千葉県、栃木県に並んで不法投棄が多い県です。不法投棄は私たちの身近に存在する問題といえるでしょう。
なぜ茨城県に多いかというと、その地理的特徴が大きく影響していることが我々の研究で明らかにされています。つまり、人口密度が高くなく人目を気にしなくてすみ、林や森など見通しが悪い場所があり、交通の便がよく都心部などから廃棄物を運びやすいなどといった特徴です。
不法投棄を防ぐ手段にはいくつかの種類があり、そのうちの一つに監視があります。しかし、地上からの監視では、監視員がカバーできるエリアに限りがあるとともに、見通しが悪い場所を見落とすことがありました。そこで、人工衛星を用いて空から監視しようという研究開発が、環境省と国立環境研究所らの研究グループによって行われました。現在の高性能の人工衛星は1m程度の大きさのものを認識できるので、不法投棄の発見にも使うことができるのです。
例として、茨城県における不法投棄現場の人工衛星画像を写真に示します。林と田畑のある地域の中に、不法投棄現場が写っています(写真中央)。この画像では、緑の部分が濃いピンクに写っています。
また、人工衛星の画像を用いると、10km四方といった広い範囲を、一度に網羅的に監視できるという利点があります。
このような技術開発により、人工衛星の整備が進んで衛星画像が利用しやすくなれば、日常的に不法投棄を空から捉えることも可能なのです。
【循環型社会形成推進・廃棄物研究センター 循環型社会形成システム研究室 研究員 田崎智宏】
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