日本での流れを追う
ゴミ(1)
今回から7回にわたり、ゴミを減らして資源を有効に活用していくための研究について紹介します。初回は、日本のゴミの流れを追う研究です。
私たちが出すゴミは、どのくらいでしょうか。家庭ゴミの発生量は日本全体で1年間に約5,000万トンですから、換算すると1人1日あたり約1kgになります。しかし、私たちが出しているゴミはそれだけではありません。例えば、携帯電話を考えてみましょう。
1台の携帯電話の裏には、石油や銅鉱石を掘り出し、それをプラスチックや銅に加工し、部品を作って、携帯電話に組み立てる過程があり、その各段階でゴミが発生しています。
携帯電話を使うためには電気が必要ですが、電気を作るときにもゴミが出ます。ゴミが出るのは、「携帯電話を捨てる時」だけではないのです。
日常生活で使うさまざまなモノも、食品から家まですべて同じです。そんな産業ゴミの発生量は年に約4億トン。家庭ゴミと合わせると1人1日あたり約10kgにもなります。何日であなたの体重を上回りますか?
国立環境研究所では、このような私たちの生活とゴミ、排ガスや排水などのさまざまな環境負荷との関係を、モノを作る段階から使い、捨てる段階まで含めて分析し、私たちがどのようなことをすればよいかについて研究しています。
その結果から、良いもの(高いもの)を買って長く使うこと、モノを作って使って捨てるすべての段階を見て、より環境負荷の少ないモノを選んでいくこと、などが私たちの向かうべき方向として示唆されます。
少し視点を変えてみましょう。私たちは1人1日あたり、どのくらいの資源を使っているでしょうか。答えは約40kg。自分と同じくらいの重さの資源を毎日使っている計算になります
「質量保存の法則」に従えば、私たちが使う資源はすべてゴミになるはずです。ところが、出しているゴミの量は使っている資源の量よりずいぶん少ないですね。この差分は、化石燃料を燃やして大気に捨てられている二酸化炭素のほか(図では「エネルギー資源」)、私たちの社会の中にたまっていくモノたちです(図では「蓄積純増」)。社会にたまったモノも、いずれはゴミとなるでしょう。
私たちはこれを「潜在廃棄物」と呼んで、今後の発生量を推計し、どう利用していくかについても研究しています。

【循環型社会形成推進・廃棄物研究センター 循環型社会形成システム研究室 主任研究員 橋本征二】
- 研究最前線
- ふしぎを追って
- 市民と研究者と環境
- 私たちと話しませんか「環境の研究」
- 生物多様性(6)「国道沿いに咲くアブラナ」
- 生物多様性(5)「日本の自然は侵入種だらけ」
- 生物多様性(4)「ダムによる河川の分断の影響」
- 生物多様性(3)「レッドデータブックを知ってますか?」
- 生物多様性(2)「珍しい生き物ってどんな生き物?」
- 生物多様性(1)「大陸移動で生じた?」
- 越境する大気汚染(4)「広域大気汚染のシミュレーション」
- 越境する大気汚染(3)「黄砂を計る」
- 越境する大気汚染(2)「酸性雨の話」
- 越境する大気汚染(1)「広域大気汚染と観測」
- 魚類生息地ポテンシャルマップ「魚の棲みやすい川を考える」
- 水と土(3)「東京湾の現状、増水と影響」
- 水と土(2)「水処理技術、うまく生かせるか?」
- 水と土(1)「黒ボク土 人が作った土?」
- オゾン層(4)「南極でのオゾン破壊はなぜ?」
- オゾン層(3)「人工衛星がとらえた推移」
- オゾン層(2)「20年で進んだ破壊」
- オゾン層(1)「何がおきているか調査」
- ゴミ(7)「PCBをなくす」
- ゴミ(6)「再生品の安全性を考える」
- ゴミ(5)「リサイクル社会の身近な循環技術」
- ゴミ(4)「水素エネルギーを作り出す」
- ゴミ(3)「処分後に土に還るのか?」
- ゴミ(2)「不法投棄を空から捉える」
- ゴミ(1)「日本での流れを追う」
- 摩周湖「汚染の超高感度検出器」
- 森林「二酸化炭素収支を観測する」
- 二酸化炭素「温暖化の原因物質を観測する」
- モニタリング「施策を目ざした観測」
- 温暖化(5)「洋上風力発電の可能性をさぐる」
- 温暖化(4)「京都議定書以降に見えるもの」
- 温暖化(3)「炭素税は対策として有効か?」
- 温暖化(2)「暑く悪天候で大雨増える」
- 温暖化(1)「深刻化するその影響」
- 花粉症(3)「予防するには」
- 花粉症(2)「なぜこんなに増えているのか?」
- 花粉症(1)「症状を悪化させるもの」
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