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2018年2月1日

「環境化学物質の『多世代にわたる後発影響』の機序に関する研究 平成25~27年度」
国立環境研究所研究プロジェクト報告の刊行について
(お知らせ)

(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会同時配付)

平成30年2月1日(木)
国立研究開発法人国立環境研究所
 編集分科会委員長:三枝 信子
 編集分科会事務局
   (環境情報部情報企画室)
       室長:阿部 裕明
       担当:青池 美江子

   国立研究開発法人国立環境研究所(以下、「国立環境研究所」という。)では、「国立環境研究所研究プロジェクト報告」として、「環境化学物質の『多世代にわたる後発影響』の機序に関する研究 平成25~27年度」を刊行します。
   環境中の化学物質への曝露による生体影響として、妊娠期曝露の影響がその子やその後の世代の成長後に後発的に顕在化するという現象があることが明らかにされつつあります。そのような現象の主要な原因として、化学物質が「エピジェネティクス」という遺伝子発現制御の仕組みに作用することが考えられています。また生態系の生物においても、エピジェネティクスを介した多世代影響の可能性が考えられています。本報告書では、マウスとミジンコにおいて化学物質の生体および生物影響の新たな側面に関して行った研究の成果をまとめました。

1 「環境化学物質の『多世代にわたる後発影響』の機序に関する研究 平成25~27年度」の概要

   近年の研究から、胎児は化学物質に対する感受性が高いこと、胎児期に母親の体内で化学物質に曝された影響が成長後に「後発的」に顕在化する事例があること、さらにその影響が生殖細胞を介して次の孫世代やさらにその後の世代に伝わり、同様に各世代の成長後に後発的に影響を及ぼす可能性があることが指摘されています。このような現象の主な原因として、化学物質が「エピジェネティクス」という仕組みに作用して遺伝子の働き方を変化させること、さらにその変化(エピジェネティック変化)が生殖細胞を介してその後の世代に受け継がれて後発影響をもたらすことが示唆されています。しかしこのような現象の理解に必要な具体的なメカニズムはまだ明らかにされていません。

   エピジェネティクスは植物から動物まで共通する部分も多く、化学物質曝露によるエピジェネティック変化が後の世代まで伝わるという現象も、ミジンコからマウスまで多くの種にわたって報告されています。そこで本プロジェクトでは、「多世代にわたる後発影響」という新たな概念について、国立環境研究所の健康影響および生物影響研究に携わるメンバーがエピジェネティクスの解析手法を共有することによって、マウスにおけるメカニズム研究、およびミジンコを用いた生物試験の新たな影響指標に関する研究を行いました。

   これまでの研究で、妊娠期のマウスに環境汚染物質である無機ヒ素を含む水を飲ませると孫世代雄の壮年期に肝腫瘍発症率が増加するという現象を明らかにしていました。本プロジェクトではその孫世代での肝腫瘍増加の形質は雄の子から孫世代に伝わることを明らかにし、さらにエピジェネティクスの仕組みの一つであるDNAメチル化の変化と遺伝子発現や体細胞突然変異との関連を検討してメカニズムの解明に関する研究をすすめました。またミジンコを用いた生物試験では、LC-MS/MSを用いてメチル化DNAの精密定量を実施し、6メチルアデニンをミジンコで世界で初めて検出し定量しました。この方法を用いることによって、DNAメチル化を指標とした各種化学物質曝露の多世代試験の解析が可能となります。

   化学物質曝露の多世代影響に関しては、危険性を看過することなく、現象を理解し正しく評価するための研究データを積み上げていきたいと思います。

●本報告書の研究課題代表者
  野原 恵子(のはら けいこ)
    国立環境研究所 環境健康研究センター センター長
    (現職名:国立環境研究所 環境リスク・健康研究センター フェロー)

2 本報告書の閲覧及び問い合わせ先

●本報告書は研究所ホームページで閲覧できます。
  http://www.nies.go.jp/kanko/tokubetu/setsumei/sr-126-2017b.html

  既刊の「国立環境研究所研究プロジェクト報告」も閲覧できます。
  http://www.nies.go.jp/kanko/tokubetu/index.html

●本報告書についてのお問い合わせ先:国立環境研究所 環境情報部情報企画室出版普及係
  (TEL: 029-850-2343  E-mail: pub@nies.go.jp)

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