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2020年8月6日

共同発表機関のロゴマーク
世界のメタン放出量は
過去20年間に10%近く増加
主要発生源は、農業及び廃棄物管理、
化石燃料の生産と消費に関する部門の人間活動

(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会、文部科学記者会、科学記者会同時配付)

令和2年8月6日(木)
国立研究開発法人国立環境研究所
国立研究開発法人海洋研究開発機構
気象庁気象研究所
フューチャー・アース日本ハブ
 

   2020年7月15日、グローバル・カーボン・プロジェクト(GCP)※1は、メタンの全ての発生源と吸収源をより詳細に網羅した最新版の世界のメタン収支「世界メタン収支2000-2017」を公表しました。今回のアップデートでは、メタンガス収支における各項目の精度を向上させるよう、世界の多くの研究者による最新のボトムアップとトップダウンの手法が採用され、最近20年間(2000–2017)のメタン収支の時間的・地域的な変動が明らかにされました。この研究から、最も放出量の変化が大きかった地理的な場所や経済部門に関する知見ももたらされ、メタン排出を削減する上で重要な指針を与えるものと期待されます。
   この研究成果をまとめた論文は、2020年7月15日に国際学術誌Earth System Science Data (ESSD) 電子版他に掲載されました。
 

※1:2001年に発足した国際研究計画で、持続可能な地球社会の実現をめざす国際協働研究プラットフォーム「フューチャー・アース」のコアプロジェクト。グローバルな炭素循環にかかわる自然と人間の両方の側面とその相互作用について科学的理解を深める国際共同研究を推進するため、日本(国立環境研究所)とオーストラリア(CSIRO)に国際オフィスが設置されている。

   メタン(CH4)は、人為的な気候変動に対して二酸化炭素(CO2)に次ぐ寄与を持つ温室効果ガスです。2017年には、大気中のメタン濃度は産業革命前(1750年頃)より150%以上も高くなりました。メタンは、全ての温室効果ガスが地球温暖化に与える影響の23%分を担っており、二酸化炭素よりも平均寿命が短い(大気中で約10年)にもかかわらず、同じ重量で比較すると二酸化炭素より強い温室効果を持っています(二酸化炭素の何倍の効果を持つかを温暖化係数[GWP]といいます)。メタンは、100年間で比較したときの温暖化係数(GWP-100)で28倍、20年間では(GWP-20)約84倍の効果をもちます。したがって、今後メタンの放出量を削減することは、効果的に地球温暖化を緩和するためにも極めて重要であると考えられています。

   今回の「世界メタン収支2000-2017」の研究結果から明らかにされた直近10年間(2008–2017)の世界のメタン収支の全体像を図1に示しました。メタンの発生源には自然起源と人為起源があるのですが、メタンの総放出量に対する人為起源の割合は約60%と半分以上を占めていることが分かりました。また、放出量と消滅量を比べると前者が後者を上回っており、大気中のメタン濃度が増加したことが示されました。その他の結果として、大気中のメタン濃度の増加が一時的に停滞した期間(2000–2006)と収支評価を行った最後の年(2017)のメタン収支を比較すると、2017年は放出量が9%(メタン重量で年間約5000万トン)増加したことが分かりました。この増加は、人為起源放出の増加によりほぼ全て説明できます。一方、湿原、湖沼、貯水池、シロアリ、地質学的放出、ハイドレートなど様々な自然発生源から放出されるメタンの放出量はほとんど変化していませんでした。

   メタン放出増加の主要因となった部門は、化石燃料(生産と消費)、農業活動や廃棄物部門です。今回の結果は、これらの部門の放出量を減らすことが気候変動の緩和に必要であることを明らかに示しています。

2008–2017年の世界のメタン収支を表した図
図1:2008–2017年の世界のメタン収支(https://www.globalcarbonproject.org/methanebudget/index.htm【外部サイトに接続します】)

地域間差:アフリカ、アジア、米国の増加;ヨーロッパの減少

   地理的には、世界の放出量のうち64%は熱帯(北緯30度以南)で生じており、北半球中緯度(北緯30〜60度)は32%、北半球高緯度(北緯60度以北)の寄与は4%に過ぎませんでした。

   2000–2006年に対する2017年の放出量を地域別に比較して見てみると、1)アフリカと中東、2)中国、3)南アジアとオセアニア、4)北アメリカで特徴的な増加がみられました。一方、これらの地域とは対照的に、ヨーロッパは放出量が減少していた唯一の地域でした。ヨーロッパで放出量が減少した主な原因は、農業や廃棄物部門の作業工程におけるメタン放出量削減のための対策が進んだことです。

   地域ごとに放出源の違いもありました。例えばアフリカとアジア(中国を除く)では、農業と廃棄物が主要な放出源であり、化石燃料がそれに次ぐものでした。対照的に、中国と北アメリカでは化石燃料の消費が最大の放出源及び増加原因となっていました。

放出量の増加は大気中濃度の増加を招く

   メタン放出量の増加が意味するところは、パリ協定の目標達成のためにはメタン放出量を削減するための相当の努力が必要ということです。現状の人為起源メタン放出量の推移は、IPCC第5次評価報告書で最も温暖化が進むことを想定した2つのシナリオ(つまりRCP8.5とRCP6.0)の間にあります。これは、パリ協定で目標とする温度上昇幅が1.5–2.0℃であるのに比べ、今世紀末までに気温が3℃以上高まる状況に相当します。

日本の貢献を含む国際協力

   「グローバル・メタン・バジェット(世界のメタン収支)」は、グローバル・カーボン・プロジェクトが行っている大気への温室効果ガス放出を削減するための政策的議論と活動をサポートすることを目的とした、網羅的で一貫性のある科学的知見を集約して温室効果ガス動態の全体像を示す活動の一環となるものです。今回は世界各地の69機関より91名の研究者が参加する国際研究チームで行われました。その中には日本の研究機関(国立研究開発法人国立環境研究所、国立研究開発法人海洋研究開発機構、気象庁気象研究所)に属する10名が含まれます。また、日本の研究機関等からは、観測ステーション及び温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)による大気中メタンの観測データも提供されており、放出量の推定に利用されています。7月15日、2編の査読付き論文がEarth System Science Data及びEnvironmental Research Lettersから出版されました。(詳細は「発表論文」参照。)

研究助成

   本研究の一部は、環境研究総合推進費課題「温室効果ガスの吸排出量監視に向けた統合型観測解析システムの確立」(2-1701)、「メタンの合理的排出削減に資する東アジアの起源別収支監視と評価システムの構築」(2-1710)及び国立研究開発法人国立環境研究所「GOSATプロジェクト」によって実施されました。

発表論文

   本プレスリリースの内容は、グローバル・カーボン・プロジェクトにより定期的に更新される世界のメタン収支に関する報告の一部であり、次の論文の内容に基づくものです。

【タイトル】The Global Methane Budget 2000-2017
【著者】Marielle Saunois他90名
【雑誌】Earth System Science Data
【URL】https://doi.org/10.5194/essd-12-1561-2020【外部サイトに接続します】

【タイトル】Increasing anthropogenic methane emissions arise equally from agricultural and fossil fuel sources
【著者】Robert Jackson他9名
【雑誌】Environmental Research Letters
【URL】https://doi.org/10.1088/1748-9326/ab9ed2【外部サイトに接続します】

データの入手方法

   世界のメタン収支のためのデータは、地域やセクターごとのデータと併せて、Global Carbon Atlasより入手できます。世界のメタン収支の報告のため、Global Carbon Atlasには世界の343都市のCO2排出量や、河川や湖からの炭素循環及びCO2排出量など、グローバル・カーボン・プロジェクトに関連する新しいデザインと機能が加わりました。
http://www.globalcarbonproject.org/methanebudget【外部サイトに接続します】
http://www.globalcarbonatlas.org【外部サイトに接続します】
https://www.icos-cp.eu/GCP-CH4/2019【外部サイトに接続します】

資料の入手方法

   世界のメタン収支2020に関するデータ及び図をこちらから入手できます。
https://www.globalcarbonproject.org/methanebudget/index.htm【外部サイトに接続します】

ソーシャルメディア

●Twitter: @gcarbonproject, #methanebudget

問い合わせ先

【本研究について】

国立研究開発法人国立環境研究所
   地球環境研究センター 物質循環モデリング・解析研究室
   室長 伊藤昭彦

   地球環境研究センター 大気・海洋モニタリング推進室
   室長 町田敏暢

国立研究開発法人海洋研究開発機構
   地球表層システム研究センター 物質循環・人間圏研究グループ
   グループリーダー代理 Prabir K. Patra

【報道担当】

国立研究開発法人国立環境研究所
   企画部広報室 電話:029-850-2308
   E-mail: kouhou0(末尾@nies.go.jpをつけてください)

国立研究開発法人海洋研究開発機構
   広報課 電話:045-778-5690
   E-mail: press(末尾に@jamstec.go.jpをつけてください)

気象庁気象研究所
   企画室 電話:029-853-8535
   E-mail:ngmn11ts(末尾に@mri-jma.go.jpをつけてください)

フューチャー・アース日本ハブ
   E-mail: noriko.kawata(末尾に@futureearth.orgをつけてください)