
都市ガス由来のメタン排出を通年調査
~タワー観測と移動観測で相補的に分析~
(大阪科学・大学記者クラブ、文部科学記者会、科学記者会、筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会同時配布)
ポイント
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大阪都市部のメタンとエタンの排出量を、高所タワーに設置した観測機器を用いて30分ごとにリアルタイムにモニタリングし、都市ガス起源のメタン排出量を高精度に推定。
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一年間の観測結果により、メタン排出量の65%~78%が都市ガス起源であることが判明。
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堺市内での約2,000kmの移動観測による結果をタワー観測と合わせて検証することで、都市ガス起源のメタン排出の実態を明らかにした。
概要
都市域で排出されるメタンガスの削減は、気候変動対策において重要です。都市ガスの主成分はメタンですが、エタンも含有しているため、エタンを計測することで都市ガス起源のメタン排出を評価することができます。しかし、エタンの排出量を直接的に測定する研究はこれまで行われていませんでした。
大阪公立大学大学院農学研究科の植山 雅仁准教授、国立環境研究所の梅澤 拓主任研究員、寺尾 有希夫主任研究員、米国 Environmental Defense Fund(EDF)の共同研究チームは、大阪都市部のメタンとエタンの排出量を、堺市内の高所タワーに設置した観測機器を用いて30分ごとにリアルタイムでモニタリングし、都市ガス起源のメタン排出量を高精度に推定しました。一年間の観測結果から、メタン排出量の65%~78%が都市ガス起源であることが判明しました。さらに、堺市内での約2,000kmの移動観測から得られたメタン排出地点の地図を、タワー観測と合わせて検証することで、都市ガス起源のメタン排出の実態を明らかにしました。本研究結果は、都市域のメタン排出量を起源別に直接評価する新たな手法を提示し、都市ガス網の漏えい監視の高度化や、地域ごとの対策優先度の明確化など、実効性の高い温室効果ガス削減施策の立案に具体的な科学的根拠を提供します。
本研究成果は、2025年11月26日に国際学術誌「Environmental Science & Technology」にオンライン掲載されました。
研究者からのコメント
世界で初めて都市域のエタン排出量を渦相関法※で測定し、得られたデータを見た瞬間は大きな感動でした。一年間、欠測なく観測を続けるため細心の注意を払い、十分に公開できるデータが蓄積されていくのを心待ちにしていました。
植山 雅仁准教授
研究の背景
都市域から排出されるメタンは、気候変動対策において削減効果の大きい温室効果ガスとして注目されています。しかし、都市域では生物起源(下水など)、都市ガス漏えいなど多様な発生源が混在し、都市域で排出されるメタンのうちどの程度が都市ガス由来であるかがよく分かっていません。特に、行政が公開している排出量データは都市ガス起源の排出量を過小評価している可能性が指摘されているものの、都市スケールでの実測に基づく検証は限られています。都市ガスには生物起源のメタンには含まれないエタンが含有されているため、エタンを計測することで、都市ガス起源のメタン排出が評価可能なことが分かってきていました。しかし、エタンの排出量を直接的に測定した研究は存在しませんでした。
研究の内容
本研究では、世界で初めて都市域のメタンとエタンの排出量を30分ごとに、リアルタイムでモニタリングしました。都市ガスに特有の成分であるエタンを目印として都市ガス起源のメタン排出量を高精度に推定した点が最大の特色です。測定には、メタンやエタンが大気中に拡散していく速度を直接観測できる渦相関法を用い、観測機器を町全体が見渡せる高所タワーに設置しました(図1)。一年間の観測から、得られたメタン排出量の65%~78%が都市ガス起源であり、生物起源と比べてその寄与が圧倒的に大きいことを定量化しました(図2)。また、約2,000kmの移動観測で特定されたメタン濃度が局所的に高い地点の多くが都市ガス起源であることと整合していることが確認され、タワー観測と移動観測の結果が相補的に都市ガス起源のメタン排出の実態を裏付けました。本研究は、都市域のメタン排出量を起源別に直接評価する新たな手法を提示し、温室効果ガス削減施策に大きな示唆を与えます。
期待される効果・今後の展開
本研究により、メタン排出起源ごとにリアルタイムで把握できる手法が確立され、排出削減策の効果を評価するアセスメントに活用できることが期待されます。これまで見過ごされていた都市ガス起源のメタン排出量の存在を明確化したため、都市内で把握されていない排出源(ミッシングソース)の特定や解明に向けた手助けにもなると考えられます。今後は、この手法を他都市にも展開し、より広範な都市でのメタン排出管理や政策立案に活かしていくことが望まれます。
資金情報
本研究の一部は、Environmental Defense Fund、JSPS科研費(JP24K03065)からの支援を受けて実施しました。
用語解説
※ 渦相関法:大気中で常に生じる乱流による風のゆらぎとガス濃度を高頻度に測定し、乱流が運ぶ物質の移動速度を捉えることで、地表と大気の間を行き来するガスの輸送量(フラックス)を連続的に直接計測する手法。
掲載誌情報
【発表雑誌】Environmental Science & Technology 【論 文 名】Natural Gas and Biogenic CH4 Emissions from an Urban Center, Sakai, Japan, Based on Simultaneous Measurements of CH4 and C2H6 fluxes Based on the Eddy Covariance Method 【著 者】Masahito Ueyama*, Akira Nakaoka, Taku Umezawa, Yukio Terao, Mark Lunt 【掲載URL】https://doi.org/10.1021/acs.est.5c09629(外部サイトに接続します)
問い合わせ先
【研究内容に関する問い合わせ先】
大阪公立大学大学院農学研究科
准教授 植山 雅仁(うえやま まさひと)
国立環境研究所 地球システム領域
物質循環観測研究室
主任研究員 梅澤 拓
【報道に関する問い合わせ先】
大阪公立大学 広報課
担当:谷
koho-list(末尾に“@ml.omu.ac.jp”をつけてください)
国立環境研究所 企画部広報室
kouhou0(末尾に“@nies.go.jp”をつけてください)
一般財団法人EDFジャパン
代表:白川 浩道
フォーム:https://japan.edf.org/contact


