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2025年11月20日

国環研のロゴ
自治体における一般廃棄物処理の将来計画を支援する
未来シミュレーターを公開

(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会同時配付)

2025年11月20日(木)
国立研究開発法人国立環境研究所

 国立環境研究所 資源循環領域の研究グループは、一般廃棄物の排出・資源化・処理状況についての現在および将来の推計データを搭載した新たなツールとして、自治体における今後の処理や施設整備の検討を支援する「一般廃棄物未来シミュレーター」(以下、「未来シミュレーター」)を公開しました。
 未来シミュレーターは、人口減少時代を迎える日本各地において、ごみ処理の広域化や廃棄物処理施設の集約を進めることを視野に入れ、単一および複数の市町村における廃棄物処理と資源循環の今後と施設整備の今後を検討するためのツールです。

1. 未来シミュレーター開発の経緯

 国立環境研究所 資源循環領域の研究グループは、これまでに一般廃棄物の排出・資源化・処理状況データの閲覧・比較を容易に行えるツール(「一般廃棄物データビジュアライゼーション(自治体支援ツール)」)を公開してきました(詳細はhttps://www.nies.go.jp/whatsnew/2025/20250127/20250127.htmlを参照)。
 しかしながら、このツールは、環境省が行う一般廃棄物実態調査のデータ、すなわち過去のデータを都道府県あるいは市町村単位で閲覧・比較できるものの、複数の市町村における将来の処理状況をまとめて予測し、必要な施設整備条件を提示するといった未来志向の自治体支援ツールではありませんでした。今後、人口が減少し、ごみ処理の広域化や廃棄物処理施設の集約などを含めて、日本全体のインフラの見直しがますます必要とされることが見込まれるため、未来志向の自治体支援ツールを簡便に利用できることが期待されます。そこで、本未来シミュレーターを開発しました。

2. 未来シミュレーターの概要とその特長

 未来シミュレーターは、(1)対象地域を選ぶ、(2)現在の一般廃棄物の処理および施設状況を把握する、(3)将来の計画を行う、という3つのステップで利用するように設計されています。
 ステップ1の「対象地域の選定」では、単一の市町村だけでなく、複数の市町村を選べることが本シミュレーターの特徴です。同一都道府県内の隣接する自治体や広域ブロックなどを想定したシミュレーションが可能です。
 ステップ2の「現状把握」では、選んだ対象地域における各市町村のごみ処理方法の内訳(図I)や、対象地域に関係する廃棄物処理施設の情報(図II)を閲覧できます。施設は、焼却施設、粗大ごみ破砕処理施設、資源化施設、最終処分施設が含まれており、各施設の処理能力や実際の処理量、などの特徴とともに、更新時期が近い施設を視覚的に確認することができます。加えて、各施設の大まかな位置や施設間の距離が地図上に表示されます(図IIの下側)。つまり、施設集約を行う場合に候補となる施設の組み合わせを、これまでよりも容易に探索することができます。

処理量の図
図I 未来シミュレーターの表示画面例(その1)
   選択した複数の市町村の一般廃棄物処理量とその内訳
焼却施設の更新目安の図
焼却施設の位置と施設間距離の図
図II 未来シミュレーターの表示画面例(その2)
   選択した複数の市町村に関係する廃棄物処理施設群の現状と施設間距離などの情報

 ステップ3の「将来の計画を行う」では、対象地域における2050年度までの一般廃棄物の排出量予測がグラフで示されます(図IIIの一番目のグラフ)。このページの上段右側では2050年度のごみ減量目標を設定することができ、ごみの減量化対策をさらに進めた場合の排出量も表示されます(同グラフ)。また、リサイクル率を追加設定することもできます。これにより、リサイクル対策をさらに進めた場合と現状維持で対策を行う場合の2050年度までの資源化量をグラフで把握することができます(図IIIの二番目のグラフ)。さらに、焼却処理量のグラフ(図IIIの三番目のグラフ)や最終処分量のグラフも示されます。そのため、減量化・リサイクル対策をさらに進めた場合と、現状維持で対策を行う場合のそれぞれで必要となる、焼却施設の規模などを把握することができます。ステップ1で複数の自治体を選んだ場合には、表示されるグラフ等は、複数の地域のものとなります。このような支援ツールはこれまでに存在しておらず、日本初のものとなります。

一般廃棄物の排出量予測、総資源化量予測、焼却処理量のグラフの図
図III 未来シミュレーターの表示画面例(その3)
   将来の計画を行う

3. 一般廃棄物未来シミュレーターのサイト

 本シミュレーターは、下記のサイトで公表しています。どうぞご利用ください。
https://www-cycle.nies.go.jp/jp/db/file01/visualize51.html

また、未来シミュレーターを含む「自治体支援ツール」全体のメニューは下記のサイトからアクセスできます。
https://www-cycle.nies.go.jp/jp/db/file01/visualize00.html

4. 関連する研究

 国立環境研究所 資源循環領域では、これまでにも関連する研究を実施してきました。以下に、そのいくつかを紹介します。

・人口減少時代の廃棄物処理を論じたもの
田崎智宏 (2025) 人口オーナスとリサイクル推進に対応した廃棄物インフラ整備-複数の政策目標の同時達成に向けて. 環境経済・政策研究, 18 (1), 33-37.
https://doi.org/10.14927/reeps.ron1801-002(外部サイトに接続します)
田崎智宏 (2023) ごみ処理広域化2.0~人口財政動態の過重時代における廃棄物管理~. 都市清掃, 76 (372), 121-125.

・施設集約のシステム分析を行ったもの
田崎智宏、西村想、稲葉陸太、河井紘輔、山口直久 (2021) 一般廃棄物焼却施設の集約効果の全国推計~集約アルゴリズムの開発と適用~. 土木学会論文集G(環境), 77 (6), II_193-II_198. https://doi.org/10.2208/jscejer.77.6_II_193(外部サイトに接続します)

・高齢化社会におけるごみ問題として紙おむつの検討を行ったもの
大下和徹、河井紘輔(2022)使用済み紙おむつの組成とごみ焼却処理に与える影響. 廃棄物資源循環学会誌, 33(4), 265-276. https://doi.org/10.3985/mcwmr.33.265(外部サイトに接続します)

5. 研究助成および謝辞

 本シミュレーターは、国立研究開発法人科学技術振興機構による共創の場形成支援プログラム「リスペクトでつながる『共生アップサイクル社会』共創拠点」(代表機関:慶應義塾大学、プロジェクトリーダー:田中浩也教授)のもとでJPMJPF2111の支援を受けつつ、国立環境研究所の資源循環分野の知的研究基盤整備の研究活動として実施しました。
 また、一般社団法人環境情報科学センターならびに一般財団法人日本環境衛生センターには、それぞれ本シミュレーターの開発と一般廃棄物のデータ整備で協働いただきました。その他にも環境省や複数の自治体の行政担当者から有益なコメントをいただき、本支援ツールの完成に至りました。ここに記して、協力いただいた関係者に御礼申し上げます。

6. 発表者

本報道発表の発表者は以下のとおりです。
国立環境研究所
資源循環領域 資源循環社会システム研究室
 室長    田崎 智宏
 主幹研究員 河井 紘輔
 特別研究員 山本 悠久

7. 問合せ先

【研究に関する問合せ】
国立研究開発法人国立環境研究所 資源循環領域
資源循環社会システム研究室 室長 田崎 智宏(たさき ともひろ)
J-Waste-DB_info (末尾に”@nies.go.jp”をつけてください)

【報道に関する問合せ】
国立研究開発法人国立環境研究所 企画部広報室
kouhou0(末尾に”@nies.go.jp”をつけてください)

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