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2018年2月28日

生物多様性と地域経済を考慮した亜熱帯島嶼環境保全策に関する研究

国立環境研究所研究プロジェクト報告 SR-127-2017

表紙
SR-127-2017 [3.55MB]

 沖縄県をはじめとする亜熱帯島嶼(とうしょ)においては、過去数十年間の土地利用の改変と、それにともなう土砂(赤土等)の流出が増加しており、農地から河川、沿岸にかけて生物多様性が低下していることが指摘されています。沖縄県では赤土等流出防止条例が1995年に施行され、開発行為による赤土等の流出に関する規制が行われるようになりましたが、耕作地からの赤土等流出対策は努力目標に留まっており、未だ実効的な対策は不充分な状況です。

 このような背景をふまえ、沖縄県久米島を対象として、(1)生息環境の改変に対する生物多様性の変化を明らかにし、保全目標とそれに必要な赤土等の流出量の削減目標を設定し、(2)赤土等の流出の観測を行い、流出モデルを構築・改良・適用して、発生源を特定し、(3)農業経営の実態把握(高齢化など)と対策評価モデル開発のために、聞き取り及びアンケート調査を実施し、対策の費用対効果分析を行いました。

 その結果、生物多様性を保全するには赤土等の流出を半分以下に減らす必要があること、農地の作付けや刈り取りの状況によって赤土等流出防止対策をすべき農地を特定できることが明らかとなり、さらに農業経営を考慮した上で費用対効果分析を行うことによって、予算規模に応じた農地対策の優先順位を決定することができました。

 生物多様性保全のための赤土等流出削減に関して、(1)削減目標の設定、(2)発生源の特定、(3) 農業経営を考慮した対策の費用便益分析という一連のシステム化を行うことができました。本研究成果は広く他地域に応用可能であり、亜熱帯島嶼(とうしょ)の生物多様性保全の進展に貢献することが期待されます。


(国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター 山野 博哉)

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