日本版2050パスウェイ・カリキュレーター
(通称:2050低炭素ナビ)の開発について
~手軽に操作可能な長期低炭素社会シナリオ分析ツール:気候安定化への議論への利用を期待~
(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配布)
平成26年5月12日(月) 独立行政法人 国立環境研究所(NIES) 社会環境システム研究センター 持続可能社会システム研究室 主任研究員:芦名 秀一 統合評価モデリング研究室 室長:増井 利彦 公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES) 気候変動とエネルギー領域 エリアリーダー:田村 堅太郎 シニアコーディネーター:片岡 八束 |
国立環境研究所(NIES)及び地球環境戦略研究機関(IGES)は、英国政府及び日本国環境省の支援により、日本版2050パスウェイ・カリキュレーター(通称:2050低炭素ナビ)を共同開発しました。おりしも、安倍総理訪英において5月1日に発表された「気候変動とエネルギー協力に関する日英共同声明」では、「2050パスウェイ・カリキュレーターの普及に関し(中略)さらなる協力と情報共有の範囲を拡大する」との文言が盛り込まれました。 2050パスウェイ・カリキュレーターは、2010年に英国エネルギー・気候変動省(DECC)によって開発された、長期低炭素社会シナリオの検討を行うための分析ツールです。日本版は、英国版カリキュレーターの枠組みを用い、日本のエネルギー需給状況、日本の社会・経済の将来動向や低炭素技術の導入ポテンシャル等のデータ・予測をベースに開発され、今後、気候安定化に向けた議論に広く利用されることが期待されます。 なお、「2050低炭素ナビ」の暫定版を、5月12日(月)の英国外務大臣付気候変動特別代表サー・デービッド・キング氏の来日を機に披露することとしています。 |
1.2050パスウェイ・カリキュレーターの概要
「2050パスウェイ・カリキュレーター」は、2010年に英国エネルギー・気候変動省(DECC)によって開発された、長期低炭素社会シナリオの検討を行うための分析ツールです。利用者は、エネルギーの需給を決める主要要因ごとに4つのレベル(レベル1:ほとんど、あるいは全く削減努力をしないレベル、レベル2:大多数のステークホルダーからみて、達成可能な削減努力を行うレベル、レベル3:達成可能ではあるが、本質的な変化と相当の削減努力が必要とされるレベル、レベル4:物理・技術的限界に向けて努力する極めて野心的なレベル)を選択することで、2050年までの5年ごとの温室効果ガス(以下、GHG)削減の道筋、GHG排出量、発電、一次エネルギー供給、部門別エネルギー需要とGHG排出量、技術オプションと費用への影響を予測することができます。
英国では、操作性の手軽さや図示の分かりやすさから、「2050年までにGHG排出を1990年比80%削減」とする目標を達成する方策を検討する際に、政策決定者、政治家への説明、有識者間のディベート(議論)や市民啓発活動等に活用されてきました。
2.日本版2050パスウェイ・カリキュレーター(通称:2050低炭素ナビ)の特徴
「2050低炭素ナビ」は、英国のシステムに、日本のエネルギー消費機器の技術情報を加えたもので、今後気候安定化に向けた議論に広く利用されることを願って、国立環境研究所(NIES)と地球環境戦略研究機関(IGES)が共同開発したものです。
「2050低炭素ナビ」は、例えば、「将来どのようなエネルギー構造を構築すべきか」、「エネルギー安全保障を確保しつつ、2050年へ向けた野心的な温室効果ガス(GHG)排出削減目標を達成するには、どのような低炭素技術を選択すべきか」といった、気候・エネルギー政策に関する様々な問いに答えを出す一助となります。
3.「2050低炭素ナビ」暫定版の披露
「2050低炭素ナビ」暫定版は、英国外務大臣付気候変動特別代表サー・デービッド・キング氏の来日に合わせ、本日5月12日に開催される「2050パスウェイ・カリキュレーターワークショップ・トライアル会合」(於:英国大使館)で披露されます。「2050低炭素ナビ」暫定版は、同ワークショップ参加者から寄せられた意見・感想をもとに、ワークショップ後も改良が行われます。
今後、7月に開催される「第6回持続可能なアジア太平洋に関する国際フォーラム(ISAP2014)」(於:横浜)にて「2050低炭素ナビ」を公開する予定です。
なお、「2050低炭素ナビ」公開後も、国内の幅広い専門家・ステークホルダーとの対話を通じて継続的に改善・更新し、より良いものにしていくことにしています。
参考
「2050パスウェイ・カリキュレーター ワークショップ・トライアル会合」
日時: 2014年5月12日(月)15:00-17:30(招聘専門家のみ参加)
会場: 駐日英国大使館 (東京都千代田区一番町1)
主催: 駐日英国大使館
共催: 公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)、独立行政法人国立環境研究所(NIES)
「第6回持続可能なアジア太平洋に関する国際フォーラム」
日時: 2014年7月23日(水)~24日(木) 会場: パシフィコ横浜(横浜市西区みなとみらい) 主催: 公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)、 国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS) 後援(予定): 独立行政法人国立環境研究所(NIES)ほか
お問い合わせ
独立行政法人 国立環境研究所(NIES)
社会環境システム研究センター
持続可能社会システム研究室
主任研究員:芦名 秀一(029-850-2227)
統合評価モデリング研究室
室長:増井 利彦(029-850-2524)
公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)
代表: 046-855-3700
気候変動とエネルギー領域
エリアリーダー:田村 堅太郎(3012)
シニアコーディネーター:片岡 八束(3815)