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2018年3月29日

生態毒性予測システム「KATE2017 on NET β版」の公開について
(お知らせ)

(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会同時配付)

平成30年3月29日(木)
環境省大臣官房環境保健部
環境保健企画管理課化学物質審査室
室長:新田 晃
室長補佐:百瀬 嘉則
室長補佐:笹原 圭

国立研究開発法人国立環境研究所
 環境リスク・健康研究センター
センター長:鈴木 規之
フェロー:白石 寛明
高度技能専門員:今井 宏治
 

   環境省と国立研究開発法人国立環境研究所は、平成30年3月29日(木)に「生態毒性予測システム(通称:KATE(ケイト))のインターネット版「KATE2017 on NET β版」を公開します。
   KATEは生態毒性QSAR(定量的構造活性相関)モデルの1つです。化学物質の構造式等を入力することにより、魚類急性毒性試験の半数致死濃度及びミジンコ遊泳阻害試験の半数影響濃度等を予測するシステムとして利用されてきました。本年度公開する「KATE2017 on NET β版」は、従来のKATE2011インターネット版「KATE on NET」の更新版であり、魚類急性毒性試験の半数致死濃度及びミジンコ遊泳阻害試験の半数影響濃度の予測に加え、藻類生長阻害試験における半数影響濃度や3種の慢性毒性予測(藻類生長阻害試験、ミジンコ繁殖試験、魚類初期生活段階毒性試験における無影響濃度の予測)の機能を追加したほか、QSARモデルの改良、操作性の向上や機能の追加等を行っています。
 

1.生態毒性予測システム「KATE(ケイト)」について

   生態毒性予測システム(通称:KATE※1)は、環境省の請負業務として国立研究開発法人国立環境研究所において開発された生態毒性QSAR※2モデルです。
   KATEは、CAS登録番号※3検索や、構造式エディタを用いた作図により、SMILES※4と呼ばれる文字列等を入力し、化学物質の部分構造等から魚類の急性毒性及びミジンコ急性毒性等に加え、藻類急性毒性や3種の慢性毒性を予測することができます。

※1 KAshinhou Tool for Ecotoxicity
※2 Quantitative Structure-Activity Relationship(QSAR: 定量的構造活性相関)
化学物質の構造上の特徴又は物理化学定数と生物学的活性(毒性等)の相関関係を構造活性相関(SAR: Structure-Activity Relationship)といい、定量的なものを定量的構造活性相関(QSAR: Quantitative Structure-Activity Relationship)といいます。構造活性相関は、例えば、特定の官能基の有無から物質の有害性の程度を推測することを指し、構造を手掛かりに毒性等を定量的に算出する仕組みをいわゆるQSARモデルと呼びます。
※3 化学物質を特定するための最大10桁の数値からなる識別子
※4 化合物の分子構造等を印刷可能な文字で線形表記した識別子

2.KATE2017 on NET β版について

   KATE2017 on NET β版は、KATE2011のインターネット版「KATE on NET」の更新版です。 主な変更点は以下のようになっています。

   ○データの追加

・参照物質データ(ミジンコ急性毒性と魚類急性毒性)に新しい物質データ(魚類:289物質 ミジンコ:109物質)を追加。
・藻類毒性とミジンコ・魚類慢性毒性予測機能を追加。
藻類毒性…藻類生長阻害試験における半数影響濃度(EC50)
藻類生長阻害試験における無影響濃度(NOEC)
ミジンコ慢性毒性…ミジンコ繁殖試験における無影響濃度(NOEC)
魚類慢性毒性…魚類初期生活段階毒性試験における無影響濃度(NOEC)
・限度試験データの導入。表やグラフに出力され、構造C判定※5にも使用。

   ○QSARモデルの更新

・部分構造検索方式をFITS※6からSMARTS※7に変更。
・化学物質の構造分類定義の改良。
・オクタノール・水分配係数以外の記述子と重回帰式や活性活性相関式※8等を組み合わせたQSARモデルの試験的導入。

   ○ページ追加や表示・操作等の改良。

※5 KATEでは、予測値の適用範囲をあらかじめ定義された部分構造の有無と参照物質群の部分構造を比較して判断します。
※6 Fragment Identification by Tree Structure:KATE2011で使用している部分構造取得プログラム。
※7 SMiles ARbitrary Target Specification:SMILES言語を拡張した部分構造表記用言語。
※8 例えば、記述子としてミジンコ急性毒性値を使用し、ミジンコ慢性毒性値を予測する式。

3.参照データについて

   KATEの構築に当たっては、環境省が実施した生態毒性試験結果※9及び米国環境保護庁のデータベース※10の魚類急性毒性試験結果を参照データとして用いています。

4.提供開始時期

   平成30年3月29日(木)を予定

5. アクセス先

   生態毒性予測システム(KATE)
   http://kate.nies.go.jp/

6.化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)における今後の活用について

   KATE2011による予測値は、既に参考情報として一般化学物質のスクリーニング評価、優先評価化 学物質のリスク評価に活用されているところです。KATEをはじめとするQSARの活用については、化審法における有害性評価に供するために、QSARによる予測値を事業者が提出するためのガイダンスや活用方法の検討も行っております。検討結果は環境省化学物質審査室のホームページなどで順次お知らせする予定です。

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