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2020年4月24日

鳥類の免疫遺伝子が配偶者選択に影響
〜寿命・生涯繁殖成功と遺伝子の関係を小型フクロウ個体群の長期繁殖モニタリングから調査〜
(北海道大学のサイトに掲載)

令和2年4月24日(金)

   北海道大学大学院理学院博士後期課程の澤田 明氏と同理学研究院の高木昌興教授は,国立環境研究所生物・生態系環境研究センターの安藤温子研究員と共同で,主要組織適合遺伝子複合体(MHC)に基づいた配偶者選択のメカニズムの一端を解明しました。
   異性を配偶者とする場合に生じる競争,すなわち性選択において,配偶者の好みがどのように進化するかは大きな難問です。これを説明するいくつかの仮説は,後続の世代がどれだけ多くの子孫を残すことができるか,すなわち適応度の増加を想定します。MHCによる配偶者選択は,このような世代間に関連するメカニズムを伴った配偶者選択の代表です。これまでの研究では,MHCによる 配偶者選択に適応的利益があることの証拠として,親自らの MHC遺伝子型と自らの適応度との関連を評価してきました。一方で,親自らのMHCによる配偶者の選択と,結果として生じる子孫の世代における適応度との関連は,野外の個体群で検証された例はほとんどありません。しかし,後続の世代がどれだけ多くの子孫を残せるかどうかが問題のため,このような子孫の世代を用いた検証はMHCによる配偶者を理解するうえでは不可欠です。
   研究グループは,沖縄県南大東島に隔離され,一夫一妻で繁殖する小型のフクロウ科の一種であるリュウキュウコノハズク(Otus elegans interpositus)個体群を対象に研究を行った結果,MHC による配偶者選択の証拠を発見しました。しかし,MHCによる配偶者選択が自身及び子孫の繁殖成功を高めるという傾向は見出されませんでした。本研究成果は,野外における鳥の個体群において,世代を超えたデータを用いてMHCによる配偶者選択の世代間間接的利益の存在を直接調査した非常に稀な実証研究です。配偶者選択による適応度増分を検証した本研究は,MHCによる配偶者選択の進化についての理解を深め,今後の研究に大きく貢献するものです。
   なお本研究成果は,2020 年 4 月 13 日(月)公開の Journal of Evolutionary Biology 誌にオンライン掲載されました。

   詳細は北海道大学のサイトをご覧下さい。

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