生物応答を用いた事業場排水実態調査における実施事業場の募集について
(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配布)
平成27年11月24日(火) 国立研究開発法人国立環境研究所 環境リスク研究センター センター長:鈴木規之 環境リスク研究推進室室長:鑪迫典久 |
国立環境研究所では、「平成27年度生物応答を利用した水環境管理手法検討調査業務」(環境省請負業務)(以下「検討業務」という。)を実施しており、本手法の活用の在り方や生物応答を用いた排水試験法の検討を進めています。 この度、本検討に資するため、事業場排水の生物影響を評価する実態調査を実施します。つきましては、生物応答試験を実際に適用するために、排水を提供していただける事業場を募集いたします。 |
1.背景と目的
事業場等からの排水には、多様な化学物質が含まれている場合がありますが、このうち、各種法令によって規制・監視されている物質は限られています。新規の化学物質や副生成物による影響、さらに複数の物質による複合的な影響については未知な部分が多く、従来の個別の物質・項目を対象とした水環境管理手法のみでは、これらの水生生物等への影響に確実かつ迅速に対応することが難しいと考えられます。
諸外国では魚類、ミジンコ、藻類などの水生生物を排水等に直接ばく露し、生死や繁殖、生長といった生物応答によって、環境中および事業場排水中の化学物質による影響を総体的に把握する手法(以下、「生物応答手法」という。)が既に1990年代から導入されています。国内でも新たな水環境管理手法として生物応答手法の導入が検討され、事業場排水の水生生物への総体的な影響の程度を魚類、甲殻類、藻類の3種の生物を用いて把握する「生物応答を用いた排水試験法(検討案)」(以下、「試験法検討案」という。)をとりまとめています。
生物応答手法を排水管理に活用するためには、さまざまな課題について整理、検討する必要があります。また、事業者が実際に生物応答手法を有効に活用するための指針を作成するためには、より幅広い業種の事業場排水を対象に、試験法検討案を適用した事例の収集が必要とされています。
そこで国立環境研究所(以下、「国環研」という。)では、平成25年度より、事業場排水の提供を公募し、試験法検討案に基づいた評価を行う「事業場排水実態調査」を実施しています。本年度も引き続き、事業場排水を提供していただける事業場を募集いたします。本実態調査は、事業者名を非公開としたうえで結果を検討業務に活用させていただきます。また、その結果について何らかの措置をとるものではないという趣旨をご理解いただき、是非ご協力いただければと考えております。
2.実態調査の概要
本調査は、事業場の排水を試験水として、魚類、甲殻類、藻類の3種類を用いて生物応答を用いた排水試験(以下、「生物応答試験」という。)と排水基準項目の化学分析を実施いたします。試験の実施は、国環研又は国環研が別途募集する試験機関(以下、「民間の試験機関」という。)が担当します。事業場においては、国環研が作成する試験計画書(排水採取計画書を含む)の立案に必要な情報(排水処理方法、最終排水口の場所等)と試験に用いる排水のご提供をお願いします。試験結果は、事業場名を非公表としたうえで国環研において取りまとめ、検討委員会における検討資料に活用させていただきます。
調査に当たってご提供いただいた排水に関する情報や試験結果等の取扱いは、国環研と事業場との間で予め守秘義務契約を締結するとともに、民間の試験機関に対しては事業場の情報を伏せた上で試験を依頼し、国環研との業務契約において国立研究開発法人国立環境研究所情報セキュリティーポリシーに基づき、事業場の機密を保持します。
3.実態調査の内容
3.1 試験計画書の作成
排水の採水方法や採水日程を含めた試験計画を決定するため、12月下旬~1月上旬にかけて、国環研の担当者と事業場担当者との打ち合わせをさせていただきます(打ち合わせの方法は原則としてメールまたは電話でのやり取りとさせていただきます)。その結果を踏まえて、国環研で作成した試験計画書を送付いたします。
3.2 事業場での排水の採取と輸送
試験計画書に基づき、事業場において、国環研又は民間の試験機関が予め提供する採水容器に排水を採水していただきます。採取した排水は、原則、36時間以内に試験が実施できるように、国環研又は民間の試験機関へ冷蔵指定で輸送をお願いいたします。なお、輸送費は国環研又は民間の試験機関が負担いたします。
3.3 試験の実施
生物応答排水試験は、国環研又は民間の試験機関により実施いたします。試験は試験法検討案に基づき、「胚・仔魚期の魚類を用いる短期毒性試験法」、「ニセネコゼミジンコを用いたミジンコ繁殖試験法」、「淡水藻類を用いる生長阻害試験法」の3試験を行います。また、必要に応じて排水基準項目の化学分析を実施いたします。
3.4 試験結果の報告
担当試験機関より試験結果報告書を4月に提出いたします。
3.5 調査におけるご協力依頼事項
前述のとおり、排水のご提供に関し以下のご協力をお願いいたします。
・試験計画作成に関するご協力
・排水の採取及び輸送に関するご協力
4.実態調査のスケジュール
11月24日~12月15日 | :事業場の募集 |
12月16日 | :調査事業場の決定 |
12月16日~1月上旬 | :採水計画を含む試験計画書の作成 |
1月上旬 | :試験機関の決定 |
1月~2月 | :事業場における採水と試験の実施 |
3月上旬 | :試験結果のとりまとめ |
3月中旬~下旬 | :検討委員会における報告 |
3月下旬 | :環境省への業務報告書の提出 |
4月 | :事業場への試験結果報告書の提出 |
5.結果の取り扱いについて
試験結果は、事業場名を非公表としたうえで、守秘義務契約又はそれに類する契約の範囲内で、専門家で構成される検討会の資料として活用し、最終的には環境省請負業務報告書としてとりまとめさせていただきます。さらに、事業場責任者の許可を受けた上で学会等の発表に使用させていただく可能性があります。
なお、守秘義務契約の範囲で、今回の結果を事業場のCSR等の企業活動に活用されてもかまいません。また、仮に生物影響が認められた場合の対応策等に関するご相談については国環研にて別途お受けいたします。
6.応募方法
対象事業場: |
水質汚濁防止法の排水規制対象となる特定施設を有する事業場。(ただし、海水を主な排水として排出している事業場は除く) 応募は原則、1企業につき1事業場でお願いしています。ただし業種が異なる事業場の場合は、複数応募していただけます。 |
募集件数: |
4~6事業場程度 応募件数が6事業場を超過した場合は、業種区分等を考慮した上で、当方で選定させていただきます。また、事業場によっては複数回のサンプリングをお願いする場合がございます。 |
申込方法: |
http://www.nies.go.jp/risk/referencelab/wet_survey2015/index.htmlにアクセスし、申込書をダウンロードして入力の上、電子メールに添付して、下記を記載の上、件名を『事業場募集申込み』として wet-survey@nies.go.jpに送信して下さい。申込書がダウンロードできない場合はメール本文に下記の事項を記載の上、送信してください。 |
- ・申込者情報:氏名、会社名、職名、メールアドレス、電話番号、住所
- ・事業場情報:事業場名、業種区分(※日本標準産業分類に基づく大・中・小・細分類の分類コードおよび項目名)、総排水量(m3/日)、電話番号、住所
- ・本調査に応募する理由
※業種区分は政府統計の総合窓口のページ(http://www.e-stat.go.jp/SG1/htoukeib/TopDisp.do?bKind=10)をご参照ください。
応募期間: | 11月24日(火)~12月15日(火) |
選考結果通知: |
12月16日(水)までに電子メールにて送付いたします。 |
問い合わせ先: |
国立環境研究所 環境リスク研究センター 担当:渡部 (わたなべ)、鑪迫 (たたらざこ) 電話・FAX:029-850-2851 E-mail:wet-survey@nies.go.jp |