情報の流れの良し悪し
村岡 浩爾
水は高きから低きに流る、水理学の始めにこう習うのだが、情報もポテンシャルの高い方から低い方へ常に流れているのだろうか。情報にも質と量があるから、それらを掛け合わせたものがポテンシャルで、ポテンシャル勾配Iに比例してメディアを流れる情報量Qが決まる。すなわち、
Q=I/k
であって、kがメディアの抵抗係数である。
国公研ができて15年になるが、そのうち12年間を過ごしてきた私には、明るい時期もあったし暗い時期もあった。それがどうも情報の流れの良さ悪さに関係しているように思われる。ある特別研究が全然進まないときがあった。指揮権がどこにあって誰との合意でそんな言動が生ずるのか、研究費がこっちに来ないでどうしてあっちへ行ってしまうのかなどがあって、情報の流れが実に妙であった。きっとメディアの抵抗係数が大きく、しかも値が一様でなかったのであろう。
一方、予算が少なくても施設が老朽化していても、情報がしっかり流れていると、研究生活は意外に安定していると感ずることが幾度かあった。いわゆる情報交換がスムーズで、みんな良い判断ができたのだろう。現在検討が進んでいる国公研の研究体制の改革も、情報の流れの良さが基本になるのではないか。メディアの抵抗係数が小さく、かつ一様であって、みんなが同じレベルの情報を得て知識を出し合うのが良いと思う。
(むらおかこうじ、水質土壌環境部長)
目次
- 創立15周年を迎えて巻頭言
- 満16年以後に向けて
- さらに開かれた研究所をめざして
- なぜ環境は護らねばならないか?—いま求められる新たな論理—
- 環境科学の研究には複眼的視野をもった専門バカが必要です
- 地球規模大気環境問題を考える
- 長期吸入暴露実験について
- 環境保健研究のあり方
- 生物分野から見た今後の環境研究
- 大型施設の課題
- 【環境週間のお知らせ】
- 酸性雨問題と環境庁の取り組み酸性雨シリーズ(1)
- 長距離輸送中に起こる種々の大気汚染の形態酸性雨シリーズ(2)
- UNEP/GRIDバンコクNodeに赴任して海外からのたより
- フロンによる成層圏オゾン破壊—光化学チャンバーによる模擬実験の結果—研究ノート
- 炭酸ガスの湖、ニオス湖その他の報告
- 米国における環境研究は曲がり角?海外からのたより
- 高精度安定同位体比質量分析装置機器紹介
- 新刊・近刊紹介
- 人事異動
- 編集後記