満16年以後に向けて
郡司 進
国公研が「我が国における環境汚染研究の中心的役割をになう機関」(設立準備委員会報告書)として昭和49年3月に設立され、満15年の足跡を刻んだ。苦労話が語り草と化した研究基盤作りの創設期、有為な人材確保と実験、試行の研究体制整備期を経て、今日、個性豊かな優れた研究者を数多く擁し、英知を結集して行う特別課題プロジェクト研究を主体に、多くの研究成果を生み出していることは、喜ばしい限りである。
他方、最近開催された研究発表会での地方公共団体の公害研究所等による研究発表テーマによれば、実に様々な地域環境問題が取りあげられており、しかも、問題の解明に至っていないものもあるように見受けられる。当研究所の先導的、中心的役割に期待を寄せる向きも少なくないのではなかろうか。
さて、創設期には念頭に具体的な姿で浮ばなかった、新たな環境問題が、今日、大きくクローズアップされている。地球規模での様々な環境変化の影響が、将来の人類の生存を脅かすのではないか、と心配されている。それらの現象の早急な解明を研究者に求められている。
当研究所においても、折しも満16年となる平成元年度から、研究に本格的に取り組む予定にしているが、内外からの期待がことのほか大きい。それらの起因や自然の仕組みを究明するためには、膨大な科学的データの集積と長い時間と費用等を必要とすることはいうまでもない。とはいいつつ、大きな制約を有しての中で、やがて21世紀を迎えるこれからの15年に向けて、長期的視点に立って新たな環境破壊の未然防止のため研究を進める使命があろう
独創的な研究により、様々な難問に立ち向かう研究者の方々の、研究環境を整え、支える我々の任務も重大である。
(ぐんじすすむ、総務部長)
目次
- 創立15周年を迎えて巻頭言
- さらに開かれた研究所をめざして
- なぜ環境は護らねばならないか?—いま求められる新たな論理—
- 環境科学の研究には複眼的視野をもった専門バカが必要です
- 地球規模大気環境問題を考える
- 情報の流れの良し悪し
- 長期吸入暴露実験について
- 環境保健研究のあり方
- 生物分野から見た今後の環境研究
- 大型施設の課題
- 【環境週間のお知らせ】
- 酸性雨問題と環境庁の取り組み酸性雨シリーズ(1)
- 長距離輸送中に起こる種々の大気汚染の形態酸性雨シリーズ(2)
- UNEP/GRIDバンコクNodeに赴任して海外からのたより
- フロンによる成層圏オゾン破壊—光化学チャンバーによる模擬実験の結果—研究ノート
- 炭酸ガスの湖、ニオス湖その他の報告
- 米国における環境研究は曲がり角?海外からのたより
- 高精度安定同位体比質量分析装置機器紹介
- 新刊・近刊紹介
- 人事異動
- 編集後記