国立環境研究所の構内緑地と自然共生サイト認定
国立環境研究所では、構内緑地を地域の自然の一部として保全し、在来生物に配慮した管理を続けています。これらの生物多様性保全への取り組みが評価され、2023年には構内の一部が「自然共生サイト」に認定されました。さらに、市内の大学・研究機関・企業・行政・NPOなどと連携し、地域の緑地保全を進めるネットワーク活動も展開しています。
発足当初からの緑地保全の取り組み
国立環境研究所は、1974年の発足当時より、もとからあるアカマツ林や雑木林をできるだけ保存するという配慮のもとに設計されました。
2013年には、環境配慮憲章に生物多様性の保全の観点から自主管理を行うことが明記されました。環境配慮に関する基本方針においては、構内緑地を地域の自然の一部ととらえ、美観を重視する区画と多様な生物相の維持に重点を置く区画を設定し、緑地等管理計画に基づいて、特に半自然的な林地において、在来の動植物の生育に配慮した緑地管理を行うこととしました。
2015年には所内の環境管理委員会において、植生保全優先区域を指定。新たな事業の実施に際してその区域への影響を避けるというルールが作られました。
場所ごとに生育する植物の種類に応じた草刈りの頻度や時期の調整、希少植物や動物の棲み処として一部のヤブを刈り残す、枯死木の伐採後は地域に合った在来種からなる雑木林に誘導する、などの管理を、生物関係の研究者と企画支援部門が連携して行っています。
自然共生サイトの認定と意義
これらの取組が評価され、2023年10月には、構内緑地の一部が「つくば生きもの緑地 in 国立環境研究所」として自然共生サイトに認定されました。認定された区域には、絶滅危惧種を含む里地に特有の動植物が生育・繁殖する場となっています。また、地域に向けた環境教育や緑地保全の働きかけといった取り組みも認定にあたり評価されました。
自然共生サイトは、生物多様性条約の目標の1つである「30by30(サーティバイサーティ、2030年までに陸と海の30%を保全する)」の達成に貢献する区域として、国が推進する仕組みであり、認定区画は国際的なデータベースにも登録されています。
構内で見られる生きものたち
構内では、環境省レッドリストに掲載されているキンラン(絶滅危惧Ⅱ類)、フナバラソウ(絶滅危惧II類)をはじめ、茨城県のレッドリストに掲載されたコカモメヅル(絶滅危惧Ⅱ類)やタムラソウ(準絶滅危惧種)など、希少な植物の生育が確認されています。
このほかにも、ツリガネニンジンやワレモコウなど、草刈りによって長い年月維持されてきた草原に特徴的な植物が見られます。

また、構内の「秋津の池」では、ニホンアカガエルが2〜3月の寒い時期に産卵します。ニホンアカガエルは、林と水場がセットで存在する里地の環境に生育する生きものですが、現在のつくば地域ではこのような環境が減っているため、構内は地域における貴重な繁殖場所となっています。

地域とのつながりと「つくば生きもの緑地ネットワーク」
国立環境研究所が立地する筑波研究学園都市では、1970年代の開発当初から、各研究機関の敷地内に30%以上の緑地を確保することが定められていました。その結果、多くの研究機関や事業所緑地内にも、このような里地・里山の自然が残されています。
国立環境研究所では、「つくば生きもの緑地ネットワーク」の発起人として、こうした緑地を将来にわたって守り、活かしていくため、つくば市内の大学・研究機関・企業・行政・NPOなどと連携した情報交換のネットワーキングを進めています。
ネットワークでは年に1度、「つくばの緑地の過去・現在・未来」や「土壌環境/生物多様性つくば戦略」をテーマに意見交換会を開催。研究者による話題提供や活発な議論を行い、参加者同士の交流を深めています。
また、市内で保全に取り組まれている緑地の見学も行っており、今後も、地域の緑地保全に関わる多様な主体をつなぐハブとして、ネットワークの活動を広げていきます。

リンク集
つくば生きもの緑地ネットワーク
環境省 自然共生サイト|30by30
環境省 エコジン 自然共生サイト:つくば生きもの緑地 in 国立環境研究所
令和5年度に環境省自然共生サイトとして認定された構内緑地「つくば生きもの緑地 in 国立環境研究所」が、OECMとして国際データベースに登録されました。
プレスリリース
つくば地域初の自然共生サイト 国立環境研究所とつくばこどもの森保育園が認定に
問い合わせ先
国立研究開発法人国立環境研究所 総務部総務課(構内緑地等管理小委員会 事務局)
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