令和4年6月16日(木) 国立研究開発法人 国立環境研究所 資源循環領域 資源循環・廃棄物研究国際支援オフィス オフィスマネージャー 石垣 智基 国際研究支援専門員(資源循環領域) 稲場 香絵 |
(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会同時配付)
国立研究開発法人国立環境研究所 資源循環領域 資源循環・廃棄物研究国際支援オフィス(以下、国際支援オフィスという)は、東南アジアにおける生活排水の適正管理の推進に向けた分散型処理システムの導入に関する活動の成果を、自治体の政策担当者向けの政策提言(ポリシーブリーフ)としてまとめました。 |
1.背景
国際支援オフィスは、令和2年12月末に終了した「日・ASEAN統合基金(JAIF)※1」の活用による「ASEAN加盟国における分散型生活排水処理の統合的管理に向けたマルチステークホルダーネットワーク形成と政策対話」(以下「JAIF-PoDIWM事業」という)の活動成果に基づいた政策提言をとりまとめました (図1参照) 。
東南アジア各国は、急激な経済成長と工業化、人口増加に伴う生活排水の増加等に直面しながらも、適切な排水処理を実施するためのシステムや制度は十分整備されておらず、処理に有効な技術も普及していない状況が続いています。そのような背景の下、JAIF-PoDIWM事業は、ASEAN地域全体および加盟各国が共通の課題や特徴的な問題点を改めて認識するとともに、構築された政策担当者・専門家ネットワークを活用して、国および都市レベルでの政策の形成と実行による実質的な問題解決を導くプロジェクトとして実施されました。
2.政策提言の概要と期待される成果
政策提言では、まず本事業実施にあたっての背景と目的を解説したうえで、分散型生活排水処理の導入に関する効果と利点を解説しています。日本型の浄化槽を含む分散型の技術システムの適切な管理においては、建設・導入時のルール整備だけでなく、定期的な点検・維持管理と機能評価などの枠組み作りが必須であり、そのための行政機関や業界団体における人材育成の必要性についても言及したうえで、JAIF-PoDIWM事業に参加した東南アジア9か国の水環境・生活排水管理の現状に関する制度や技術の現状と課題について概観しました。こうした東南アジア諸国の現状や特徴を考慮しつつ、持続可能な分散型生活排水処理システムを選択するための意思決定支援ツールを紹介しています。
さらに、生活排水の適正管理に係る5つの提言(分散型生活排水処理システムの技術開発、生活排水管理の基本計画実行のための調整、財政的な準備と処理料金の徴収システムの整備、地方自治体レベルでの政策の実効的な遂行と人材育成、性能評価のための試験法規格の構築)と未来像を示すとともに、事業に参加した実務者ならびに研究者からの宣言を記載しました(図2)。
本政策提言がステークホルダーにより活用されることで、研究成果の地域実装が推進されることが期待されます。このことは、研究成果の効果的な社会還元として、また実質的な政策貢献の機会として重要なアウトカムであると考えられます。
今後も国際支援オフィスでは、資源循環分野の研究者が実施している国際共同研究や世界的な波及効果の高い成果の発信を通じて、研究成果の社会実装の支援を行っていく予定です。
3.政策提言の入手
国立環境研究所資源循環領域の成果物のページよりダウンロードにてご覧いただけます。
https://www-cycle.nies.go.jp/jp/report/policybrief1.html
(印刷版をご入用の方は下記担当者までお問い合わせください)
※1 ASEAN共同体設立に向けて統合を進めるASEANの支援のために、日本政府の拠出金に基づき、平成18年にASEAN事務局に設置された基金(Japan-ASEAN Integration Fund)
※2 対 象 国:ASEAN 加盟国のうち、既に生活排水の適正管理体制がほぼ普及しているシンガポールを除く、インドネシア、カンボジア、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオスの9ヶ国。
【参考リンク】
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https://www.nies.go.jp/whatsnew/20210513/20210513.html
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https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/asean/j_asean/jaif.html
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https://jaif.asean.org/
【報道に関する問い合わせ】
国立研究開発法人国立環境研究所 企画部広報室
kouhou0(末尾に@nies.go.jpをつけてください)
029-850-2308
【問い合わせ先】
国立研究開発法人 国立環境研究所 資源循環領域
資源循環・廃棄物研究国際支援オフィス
E-mail: intwaste_ra(末尾に@nies.go.jpをつけてください)
オフィスマネージャー 石垣 智基
E-mail: ishigaki (末尾に@nies.go.jpをつけてください)
国際研究支援専門員(資源循環領域) 稲場 香絵
E-mail: inaba.kae(末尾に@nies.go.jpをつけてください)
図2:プロジェクトの概要と政策提言
(今後の展望がわかりやすく掲載されている。)