遺伝子組換え技術とは
コラム2
遺伝子は核酸(DNAやRNA)でできています。核酸に別の核酸の一部が挿入されたり、入れ替わることを「遺伝子組換え」と言います。例えば有性生殖する生物は、オス由来のDNAとメス由来のDNAをシャッフリングして、新たな塩基配列をもつ生殖細胞を作っています。その他、大腸菌にウイルスの一種であるバクテリオファージが感染すると、バクテリオファージのDNAの一部が大腸菌のDNAに取り込まれるといったことが起こります。このように遺伝子組換えは生物の生活史の中で普遍的に見られるため、自然界での遺伝子組換えで生成した生物は「遺伝子組換え生物(Genetically Modified Organisms, GMO)」とは呼びません。
1980年代に人為的に加工したDNAを生物へ導入する技術が誕生しました。これを「遺伝子組換え技術」と呼びます。異種の細胞を融合する「細胞融合」、DNAを物理的に細胞へ導入する「パーティクルガン」や「リポフェクション」、ウイルスや土壌細菌(アグロバクテリア)を介してDNAを導入する「トランスフェクション」や「アグロインフェクション」などの技術があります。
遺伝子組換え技術を使えば、自然には発生しない塩基配列を持った生物(すなわちGMO)を人為的に作ることができます。例えば、1980年代に大腸菌にヒトインシュリン遺伝子を導入することにより、大腸菌によるヒトインシュリンの大量生産に成功し、糖尿病患者の寿命が飛躍的に伸びました。1990年代には除草剤耐性遺伝子を導入した農作物が作られ、遺伝子組換え農作物の商業栽培が始まりました。しかしながらこうした遺伝子組換え生物については、生物多様性に悪影響を生じさせることを防止するため、利用にあたってはカルタヘナ法で定めたルールに従う必要があります。