ベクトル型スーパーコンピュータ「SX-ACE」の稼働開始のお知らせ
(筑波研究学園都市記者会配付)
平成27年5月29日(金) 国立研究開発法人国立環境研究所 環境情報部部長 :柳橋 泰生 担当 :澤 佳 地球環境研究センター長 :向井 人史 主幹 :井桁 正昭 担当 :広兼 克憲 |
国立環境研究所では、地球規模での環境変化に関する現象解明や予測など研究所内外で実施される地球環境研究を支援するために、1992年に初めてスーパーコンピュータを導入しました。この度、スーパーコンピュータをSX-ACE(NEC製)に更新し、6月1日より稼働を開始しますので、お知らせいたします。 |
1.新スーパーコンピュータの概要
「SX-ACE」は2013年11月に発売されたNEC製のベクトル型スーパーコンピュータです。大学や研究機関で利用されており、超高速な並列処理を要する科学技術や大規模なデータを扱う高度なシミュレーションを得意としています。主な特徴・前機種との性能比較は下記のとおりです。
(1)多数の計算を一括処理する性能が高い特徴を持つベクトル型
スーパーコンピュータです。
(2)計算速度が前機種の7.5倍の性能を持ち、省エネ性能、省スペース化が
実現されています。
(3)全メモリ(主記憶装置)容量は前機種の6倍になります。
(4)ノード数(コンピュータの台数)は前機種の48倍になります。
(5)全CPU数(コンピュータの頭脳の数)が前機種の12倍になります。
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(参考1)前機種との性能比較
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前機種SX-9 |
新機種SX-ACE |
ノード数 |
8 ノード |
384 ノード |
CPU数 |
128 個 |
1536 個 |
理論演算性能 |
13.1 TFLOPS |
98.3 TFLOPS |
メモリ容量 |
4 TB |
24 TB |
2.新スーパーコンピュータ稼働式
今回のスーパーコンピュータ稼働に伴いまして、2015年6月1日(月)に新スーパーコンピュータ稼働式を開催いたします。
3.スーパーコンピュータシステムを用いて行う研究内容
スーパーコンピュータを用いて行う研究テーマは公募を行い決定しています。研究内容は、気候システム、降水システム、陸面水文過程、流域環境、地球流体力学、エアロゾル、オゾン、衛星リモートセンシングなど多岐にわたります。
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(参考2)新スーパーコンピュータシステムを用いて行う研究テーマ(2015年度)気候変動予測の信頼性を高めるためのテーマ、人工衛星で得られた膨大な温室効果ガスに関する観測データを処理して更なる研究・行政利用に資するためのテーマ、様々なモデルを結合してより統合的な予測結果を得るためのテーマの他、スーパーコンピュータでしかできない様々な分野のテーマなどが予定されています。
① 高度な陸域要素モデルの開発とそれを用いた全球スケールの気候変動研究
② 気候変動予測における不確実性伝播過程に関する研究
③ MIROCモデルをベースにした化学気候モデルの開発とオゾン層の将来予測
④ 広域大気汚染構造の理解と対策評価に関する研究
⑤ 海洋混合層スキームの高度化と流動・水質・生態系シミュレーションへの応用
⑥ GOSATによる濃度データの高精度モデル予測と温室効果ガスの地表面吸収排出量の推定
⑦ 高分解能でのリモートセンシング解析技術を用いた土地利用モデルシミュレーション
⑧ GOSATデータ処理運用システムにおける確定再処理用参照データの作成
⑨ NICAMによる雲降水システムの研究
⑩ 気候モデルMIROCを用いた過去と将来の気候モデリング
⑪ 樹木年輪セルロースの酸素同位体を用いた気候モデルMIROCの気候変動再現性評価
⑫ GOSATおよびGOSAT-2衛星のデータ解析に関わるエアロゾル・モデルシミュレーション
⑬ 系外惑星大気の数値計算:陸惑星の気候多様性に関する考察
⑭ 化学-気候モデルによる突然昇温に伴う成層圏オゾンの急速な変化が中層大気循環に及ぼす影響評価
過去(2013年度以前)の研究成果の詳細はWEBサイトに掲載されています。なお、2014年度分についても同WEBサイトに掲載予定です。
(http://www.cger.nies.go.jp/ja/activities/supporting/supercomputer/index.html)
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(参考3)スーパーコンピュータを利用した研究成果の一例
【地球温暖化の将来予測の信頼性を高める研究の例】
コンピュータで気候変動を予測する際のポイントとなる「気候感度(CO2倍増時の全球平均地上気温上昇量)」に影響するパラメータが、気候感度の不確実性を増幅するか(赤色)、抑制するか(青色)を示す指標(下層雲量、中層雲量)の計算結果です。この新アプローチによって、これまで知られていなかった「パラメータを変更したときの気候感度のばらつきが計算に用いるモデルによって異なる要因」を明らかにすることができました。