ユーザー別ナビ |
  • 一般の方
  • 研究関係者の方
  • 環境問題に関心のある方

気候変動・大気質研究プログラム(令和 7年度)
Climate Change and Air Quality Research Program

研究課題コード
2125SP010
開始/終了年度
2021~2025年
キーワード(日本語)
気候変動,大気質,温室効果ガス,短寿命気候強制因子
キーワード(英語)
climate change,air quality,greenhouse gas,short-lived climate forcer

研究概要

地球の気候と大気質を安定化させる2℃/1.5℃目標の実現に貢献することは、科学コミュニティが挑戦すべき新たな課題である。パリ協定の目標達成度を測るために、国際社会全体の温室効果ガス(GHG)の削減政策の達成度を5年ごとに評価するグローバルストックテイクの結果は各国のNDC(自国が決定する貢献)の定期的な更新・強化に対して重要な情報を与える。また、IPCC第7次評価報告書では短寿命気候強制因子(SLCF)の国別排出量推計に向けた動きが始まることとなり、その方法論の構築ならびに気候・環境影響の把握が急務となっている。そこで、GHGおよびSLCFについて、全球から都市の規模における衛星、地上、船舶、航空機プラットフォームによる地球観測データを用いて、国および都市レベルのインベントリを定量的に評価することで削減効果の検証を早期に行うとともに、最新の排出量推計を考慮したモデリング研究により、気候や大気質の変動に関する再現や将来予測を高精度化し、今世紀後半に温室効果ガスの人為起源排出量を実質的にゼロにする長期目標に向けた緩和策などの世界の気候変動に関する政策決定に必要な知見を提供する。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

気候・大気質変動に関する現象と要因の解明、統合的な観測及び監視、モデルによる再現及び予測並びに緩和策の効果検証に取り組む。具体的には、地球観測データの複合利用により、全球規模におけるGHG吸収・排出量の推計システムを構築するとともに、地域・国・都市規模における人為起源のGHG及びSLCFの排出量の評価の方法論を確立し、定量的評価を行う。こうした最新の知見をもとに地球規模における気候や大気質の変動の再現や将来予測を従来より高精度に行うとともに、影響評価やシナリオ研究に活用する、猛暑や豪雨、大気汚染など「ハザード」に関する基礎データを得る。これらの取組により、パリ協定の目標達成度を測るグローバルストックテイクや温室効果ガス・短寿命気候強制因子の国別排出量の推計及び検証等、世界の気候変動に関する政策決定に必要な科学的基盤を提供し、地球の気候と大気質を安定化させる2℃(1.5℃)目標の実現に貢献する。そのため、以下の3つの課題に取り組む。(1) 地球規模における自然起源及び人為起源温室効果ガス吸収・排出量の定量的評価。(2) 地域・国・都市規模における人為起源短寿命気候強制因子及び温室効果ガス排出量の定量的評価。(3) 最新の排出量評価等を考慮した気候・大気質変動の再現及び将来予測の高精度化。

今年度の研究概要

(1) 地球規模における自然起源および人為起源GHG吸収・排出量の定量的評価は、アジア太平洋域を中心として、熱帯域から極域をカバーする地上や船舶、航空機プラットフォーム等を用いた観測を安定的に実施するとともに積極的にデータ公開を行う。また、同位体比やGHG関連成分・パラメーター(O2、CO、VOC、クロロフィル、SIFなど)の観測や微気象学的フラックス計測も合わせた収支解析のシンセシスをさらに進めるなどして、全球規模におけるGHG吸収・排出量推計システムを確立する。
(2) 地域・国・都市規模における人為起源SLCFおよびGHG排出量の定量的評価は、都市レベルでのCO2/CH4排出量の検証とSLCFとGHGのシナジーによる排出量解析を進め、継続してきた東京スカイツリーや代々木の他、新規に開始した首都圏でのin situ並びにリモートセンシング観測等を高分解能モデルと組み合わせた統合解析を行うとともに、排出量の経年変化を導出し、地域・国・都市規模における人為起源のGHG及びSLCFの排出量の評価を、特にアジア起源のBCと、国内首都圏のCO2について実施する。
(3) 最新の排出量評価等を考慮した気候・大気質変動の再現および将来予測の高精度化は、全球モデルを用いた計算を行い、SLCF排出量の変化に対する大気質や気候の応答を解析してその影響・不確実性を定量化する。また、SLCF排出量の推計に伴う不確実性を定量化する。さらに、太陽活動や火山性エアロゾルのオゾン層と気候への影響を解析することで、成層圏と対流圏の相互作用の理解を深める。加えて、気候予測の不確実性を低減する新たな手法を開発するとともに、IPCC第7次報告書へ向けた公式シミュレーションを開始する。

課題代表者

谷本 浩志

  • 地球システム領域
  • 領域長
  • 博士(理学)
  • 化学,物理学,地学
portrait

担当者