新刊紹介
環境儀68号「スモッグの正体を追いかける-VOCからエアロゾルまで-」
大気に排出された化学物質は、あるときは太陽光の降り注ぐ日中に、またあるときは夜間に起こる化学変化により別の物質に変化します。化学変化によって生じる二次汚染物質は、直接排出された汚染物質とともに、環境、人体及び生態系に有害な影響を及ぼす恐れがあります。
国立環境研究所では、大気中の化学変化を調べるための「スモッグチャンバー」と呼ばれる装置を使って、光化学オキシダントや二次有機エアロゾル(PM2.5の主要成分の一つ)の発生に関連する化学変化のメカニズムの解明に取り組んできました。
本号では、「スモッグチャンバー」の仕組みや、オキシダントと二次有機エアロゾルの発生プロセス等について解説します。
国立環境研究所研究プロジェクト報告 第127号「生物多様性と地域経済を考慮した亜熱帯島嶼環境保全策に関する研究 平成25~27年度」
本報告書は、沖縄県久米島において生物多様性を損なっている大きな原因である農地からの土砂流出問題に対して、生物調査に基づく削減目標の設定、定点カメラ観測と土砂流出モデルによる発生源の特定、そして農業経営を考慮した対策の費用便益分析を行いました。これによって、経済を考慮した生物多様性保全を行うことが可能となります。本研究の成果は久米島のみならず他の地域への展開が期待されます。
国立環境研究所研究プロジェクト報告 第128号「観測と数値予報を統合したPM2.5注意喚起手法の改良 平成25~27年度」
本報告書は、日平均濃度が70µg m-3を超えると予想される場合に発令されるPM2.5に関する注意喚起の判断手法を改良する取組みについて取りまとめたものです。大気汚染の数値予測システムを改良するとともに、観測データを用いた注意喚起の判断について現在用いられている手法とは別の手法を用いることによって、PM2.5高濃度の予想の見逃しを大きく減じることが可能であることを示しました。
国立環境研究所研究プロジェクト報告 第130号「ハウスダスト中の化学物質が誘導する発達神経毒性の包括的理解に向けた多面的評価法確立 平成26~28年度」
本報告書は、化学物質の発達期の脳への有害性を動物モデルで評価する手法を開発するプロジェクトの成果を取りまとめたものです。生活環境中に存在する化学物質の発達期曝露影響を多面的に評価することができる体制を構築し、未だ有害性が確定していない化学物質に対する影響評価を行うことで評価の有効性を検討しました。その結果、特定の農薬や難燃剤を評価する際に役立つ有用なエンドポイント(評価項目)やバイオマーカー(生体の生理的変化を定量的に把握する指標)を提示することができました。
国立環境研究所研究プロジェクト報告 第131号「iPS細胞を活用したin vitroハザード評価システムの構築に関する研究 平成26~28年度」
本報告書は、ヒトおよびマウスiPS細胞を用いて、呼吸器への毒性が評価可能なハザード評価システムの構築を行うとともに、大気環境中に存在する化学物質等を対象として毒性評価を行い、潜在的なハザードを明らかにすることについて取りまとめたものです。ヒトiPS細胞については、呼吸器を構成する各種の肺上皮細胞への分化誘導を行い、有害化学物質の毒性評価を実施しました。マウスiPS細胞からは免疫系のマクロファージへの誘導を行い、更に大気汚染物質による影響を解析した結果、炎症や酸化ストレス反応といった毒性影響が検出されました。
目次
- 統合研究の意義
- 世界及びアジアを対象とした持続可能シナリオの開発に関する研究
- 気候変動抑制の鍵は賢明な政策にあり!?(2018年度 37巻1号)
- 持続可能な開発目標への道筋
- 国際応用システム分析研究所での海外研修を通して
- AIM (Asia-Pacific Integrated Model) の開発を通じた人材育成
- 第3回NIES国際フォーラム開催報告:持続可能なアジアの未来に向けて
- 「第37回地方環境研究所と国立環境研究所との協力に関する検討会」報告
- 平成29年度の地方公共団体環境研究機関等と国立環境研究所との共同研究課題について
- 「第33回全国環境研究所交流シンポジウム」報告
- 国立研究開発法人国立環境研究所 公開シンポジウム2018『水から考える環境のこれから』開催のお知らせ
- 表彰
- 木漏れ日便り
- 人事異動
- 編集後記