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2018年3月15日

iPS 細胞を活用したin vitroハザード評価システムの構築に関する研究

国立環境研究所研究プロジェクト報告 SR-131-2017

表紙
SR-131-2017 [6.95MB]

 近年、動物実験に依存した毒性評価試験から脱却し、細胞を用いた試験を化学物質管理規制に活用するための戦略が練られています。そうした中、倫理的に問題もなく、より正常細胞に近い性質を持つと期待できる人工多能性幹細胞(iPS細胞)の利活用が着目されてきています。iPS細胞は体の組織を構築する様々な細胞に誘導することが可能と言われている細胞であるため、毒性評価の強力なツールとして期待されるようになりました。

 このような背景を踏まえ、本研究では、ヒトおよびマウスiPS細胞を用いて、呼吸器への影響が評価可能な細胞毒性試験であるハザード評価システムの構築を行うとともに、大気環境中に存在する化学物質等を対象として毒性評価を行い、潜在的なハザードを明らかにすることを目標に研究を実施しました。

 その結果、ヒトiPS細胞については、呼吸器の部位によって異なる様々な肺上皮細胞への誘導を細胞特異的な指標遺伝子で調べたところ、気管支や肺胞を構築する繊毛細胞、粘液分泌細胞及び、肺胞上皮細胞の指標遺伝子の増加が認められました。これら肺上皮の前駆細胞を有害化学物質に曝露したところ、化学物質に特徴性のある応答性を確認できました。免疫系の細胞については、マウスiPS細胞からマクロファージへの分化誘導を行うことで、その細胞を用いて大気汚染物質のPM2.5やその構成成分による炎症や酸化ストレス反応の毒性影響を検出することができました。

 本研究成果は、iPS細胞由来の肺上皮細胞やマクロファージが大気汚染物質の細胞毒性評価試験法として利用できる可能性を示唆しており、今後、環境化学物質の呼吸器への影響を評価する上での科学的基盤となることが期待されます。


(国立環境研究所 環境リスク・健康研究センター 曽根 秀子)

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