2019年6月28日
アオコの実像
シアノバクテリアの遺伝子解析からわかること
環境儀 No.73
日本の高度経済成長とともに、湖の水質は急激に変化しました。処理されないまま流れ込む生活排水、特に洗剤に添加されたリン酸塩は湖の生態系を大きく変えました。農地に過剰に投入された肥料、また野積みされた畜産廃棄物、未処理の生活排水などからの窒素・リンの影響により日本の多くの湖にはアオコ現象が発生し、社会問題になりました。1970年に水質汚濁防止法が、1984年には湖沼法が制定され、現在でも水質回復に多くの努力が払われています。
国立環境研究所では研究所発足2年後の1976年から霞ヶ浦(西浦)のモニタリングを実施しています。霞ヶ浦では1973年から1986年頃まで毎年のようにアオコが発生していましたが、その後2005年まで、アオコの発生は見られなくなりました。しかし、アオコの原因藻類であるシアノバクテリアは湖水中で生存していました。そして、2011年の夏に社会問題となるほどのアオコ現象が生じました。シアノバクテリアはこの間どのような挙動をしていたのでしょうか。
本号では、低濃度のシアノバクテリアを正確に捉える手法としての16S リボソームRNA遺伝子濃度の計測と、シアノバクテリアの挙動と環境因子との関係、また、アオコの原因シアノバクテリアの代表である、Microcystis aeruginosaの挙動について、次世代シークエンサーを使った遺伝子解析の成果を報告します。