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2018年6月29日

いぶきの観測手法について

コラム3

 いぶきは大気中の温室効果ガスの吸収による光の減衰を測定しています。この減衰の度合いは、温室効果ガスのカラム量だけでなく、太陽光が差し込む方向や衛星が観測する方向によって光がたどる大気中の道程が変化することでも変わります。加えて、大気中には雲やエアロゾルなどの、地表面を覆い隠したり、光の進む方向を変えたりする妨害物質が多く存在しています。

 このような妨害物質の影響を適切に取り除き、温室効果ガスのカラム量を精度よく推定するための手法はいまのところ確立していません。そのため、世界中の研究者が精力的に手法を研究しています。国立環境研究所では、以下のような手法を用いています。

 カラム量を観測するためには、まずはFTSの視野内に雲が含まれるデータを除外します。一方、エアロゾルはどこにでも存在するため、雲のようにエアロゾルのない場所を探すことはできません。エアロゾルといっても色々な種類があり、地域によって卓越する種類や存在高度も違えば、種類や粒子の大きさの違いによって光を散乱する特性も変わります。エアロゾルの影響を低減するには、できる限り現実に近いエアロゾル情報を用いることが近道になります。そこで、FTSの観測点にどんな種類のエアロゾルが存在していたかについては、エアロゾル輸送モデルの計算結果を利用し、どれだけの量のエアロゾルが存在していたかについては温室効果ガスのカラム量と同時に推定する、というアプローチを取っています。しかしながら、モデルによる計算結果や同時推定結果が必ずしも現実に近いとは限りません。

 現実とのズレに起因する温室効果ガスのカラム量の誤差はエアロゾルの量が多いほど顕著になることから、同時推定されたエアロゾルの量がある閾値(いきち)を超えた場合には、推定された温室効果ガスのカラム量の正しさは保証されないものとして解析結果を棄却しています。

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