2015年3月31日
コラム1突然変異と発がん
先祖から伝えられる生物の色や形などの性質(形質;先天的に子の形質が親の形質に似ることを遺伝という)が、子の代に受け継がれる際に遺伝子の変化によって変わることを突然変異といいます。例えば、フナの体色は黒ですが、黒い体色を決定する遺伝子が変化した結果、体色が赤に変わったものがヒブナです。現在は、この遺伝子の変化とは細胞の中にあるDNAの配列の変化であることが判っています。DNAは細長い分子で、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)という4種類の塩基が並んでいます。この塩基の順番(配列)をコードといい、これが遺伝情報を担っています。コードに従って、様々な種類のタンパク質が合成され、そのタンパク質の働き方により生物の性質が決まります。子が親に似るのは、コードが親から子へ正しく伝えられるからです。しかし、精子や卵子のDNAにおいて、遺伝情報のコードつまり塩基の配列が正しく伝わらないと、親とは異なるタンパク質が合成されたり、あるいは必要なタンパク質が合成されなかったりした結果、子の形質が変わることがあります。現在では、DNA上の塩基配列の変化そのものも突然変異と呼んでいます。化学物質のDNAへの結合は突然変異の原因の一つです。結合する化学物質の性質により、引き起こされる塩基配列の変化も異なります(図1)。
図1 化学物質の作用による突然変異の発生
突然変異は、精子や卵子以外の体細胞にも起こります。もし、突然変異が正常な細胞の増殖を調節する遺伝子に発生すると、細胞が無秩序に増殖するようになる場合があります。この無秩序な細胞の増殖こそが「がん細胞」の大きな特徴で、DNAの突然変異は、正常な細胞ががん細胞に変化する主な原因の一つです(図2) 。
図2 突然変異とがん細胞の発生の関係
目次
- 大気環境中の化学物質の健康リスク評価~実験研究を環境行政につなげる~環境儀 NO.56
- 大気中の有害化学物質のリスクを評価するためにInterview 研究者に聞く
- コラム2細菌を用いた突然変異検出法と遺伝子導入動物を用いた突然変異検出法
- コラム3大気中の有害化学物質
- コラム4動物実験データに基づく発がんリスク評価
- みんなが曝露されている? ─リスク評価の重要性Summary
- 化学物質:リスク評価からリスク管理へ研究をめぐって
- 国立環境研究所における「有害大気汚染物質の リスク評価手法に関する研究」のあゆみ
- 過去の環境儀から
- PDFファイル環境儀 NO.56 [3.7MB]
- (参考資料)「今後の有害大気汚染物質の健康リスク評価のあり方について」(改定版)
- (参考資料)「今後の有害大気汚染物質の健康リスク評価のあり方について」(改定版)に係るフロー図
目次
- 大気環境中の化学物質の健康リスク評価~実験研究を環境行政につなげる~環境儀 NO.56
- 大気中の有害化学物質のリスクを評価するためにInterview 研究者に聞く
- コラム2細菌を用いた突然変異検出法と遺伝子導入動物を用いた突然変異検出法
- コラム3大気中の有害化学物質
- コラム4動物実験データに基づく発がんリスク評価
- みんなが曝露されている? ─リスク評価の重要性Summary
- 化学物質:リスク評価からリスク管理へ研究をめぐって
- 国立環境研究所における「有害大気汚染物質の リスク評価手法に関する研究」のあゆみ
- 過去の環境儀から
- PDFファイル環境儀 NO.56 [3.7MB]
- (参考資料)「今後の有害大気汚染物質の健康リスク評価のあり方について」(改定版)
- (参考資料)「今後の有害大気汚染物質の健康リスク評価のあり方について」(改定版)に係るフロー図