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2015年3月31日

コラム4動物実験データに基づく発がんリスク評価

 健康リスク評価では、疫学研究の知見に基づくリスク評価が望ましいことはいうまでもありません。しかし、有害大気汚染物質の健康リスク評価は吸入曝露の知見に基づく評価が原則で、利用可能な疫学知見の多くは、労働衛生・産業疫学領域から得られたものでした。今後、指針値の設定に向けて健康リスク評価値を算出するためには、疫学知見がない、あるいは定量評価の可能な人のデータが得られないことが予想されます。そのため、動物実験の知見を用いてリスクを評価し、人へ外挿して評価値を算出することが必要です。

 用量反応関係の明確な発がん実験などのデータがあれば、数学モデルをデータに当てはめて低濃度における反応率(発がん率)を推定できます。また一定の反応率を引き起こす濃度をベンチマーク濃度として算出し、この濃度の信頼下限値を出発点として単位濃度当たりのリスクを求めれば、目的のリスクレベルに相当する濃度を算出できます(ベンチマークドース法(図7)。1,2-ジクロロエタンの指針値設定では、この方法で動物の発がん試験データを用いて評価値を算出しました。

図7 発がんデータにおける観察データの用量反応関係とベンチマーク濃度の模式図
10%発がん推定濃度の(EC10)をベンチマーク濃度とし、その95%信頼下限値(LEC10)を出発点とした場合を示す。