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2005年6月15日

京都議定書以降に見えるもの

温暖化(4)

 2月16日、京都議定書が発効しました。
 京都議定書とは、地球温暖化問題の解決に向けて1997年12月、京都で開催された会議で採択された国際法です。多くの国際法は、発効(効力を持つこと)するために主要国の批准(国会などで承認されて締約国となること)の手続きを必要とします。京都議定書の場合、世界最大の排出国である米国が批准しなかったため発効が遅れていたのですが、これでようやくスタートできたことになります。
 議定書は、2008年から12年までの5年間、先進国の温室効果ガス排出量に対して数量目標を設定しており、例えば、日本であれば90年の排出量よりも6%低い量に抑えなければなれないことになっています。このように、温暖化問題解決のため必要な具体的行動の第一歩を示す画期的な合意に、議定書はなっています。
 他方、一部では、「京都議定書は失敗だった」という批判が聞かれます。採択された97年当時、12年までの排出量に合意するのが精一杯で、その後の目標については今後の交渉に委ねることにしたため、13年以降に関する合意が急務となっています。
 また当時は、先進国がまず先に温暖化の責任を負うべきだという声が強かったため、途上国に対して排出抑制義務を設定しませんでした。が、近年、一部の途上国では著しい経済発展とともに温室効果ガス排出量も急増していることから、今後は少なくとも一部の途上国にはなんらかの対策を求めるべきだという声が強まっています。
 さらに、世界総排出量の四分の一弱を占める米国が、国内の強い反対で2001年にこの議定書から離脱してしまったため、13年以降に関する話し合いに米国を復帰させるためには、京都議定書以外の方法を模索すべきだという意見があります。
 では、京都議定書は本当に失敗だったのでしょうか。米国でも州政府や産業界は、米国以外の国々が京都議定書を掲げて前進し始めたのを目にし、慌てて独自の対策を進めるようになりました。途上国でも、将来は温暖化対策が求められることを予想し、高い関心を持ち始めています。このような動きは、京都議定書がなければ生じなかったでしょう。
 発効に伴い、13年以降の国際枠組みのあり方に関してすでにさまざまな案が出されています。地球温暖化の抑制に効果的であるべきということは当然ですが、それ以外にも、国家間の衡平性が保たれること、費用効果的であること、制度として複雑すぎないこと等が求められています。温暖化抑制に向けた人類の取り組みは、まだこれからといえます。

1997年のCOP(京都会議)会場

【社会環境システム研究領域 環境経済研究室 主任研究員 亀山康子】

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