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2005年6月8日

炭素税は対策として有効か?

温暖化(3)

 地球温暖化を防止することを目的とした京都議定書では、第一約束期間(2008年から2012年)における温室効果ガス排出量の目標が定められ、日本では1990年の排出量と比較して6%削減しなければなりません。
 温室効果ガスには、メタンや亜酸化窒素、フロンなどさまざまな気体がありますが、日本ではその大部分を二酸化炭素が占めています。このため、二酸化炭素排出量をいかに削減するかが重要となります。
 二酸化炭素の主な排出源は、石炭や石油、ガスといった化石燃料です。化石燃料は、大規模な火力発電所から、家庭の自動車やガス給湯器まで幅広く消費されており、一つ一つの排出源に対して規制をかける対策は、非効率的で現実的ではありません。
 そこで、二酸化炭素の排出量に応じて課税し、化石燃料の価格を上昇させることによって、その消費量を抑える方法が検討されています。
 これが炭素税と呼ばれる政策で、価格の面から経済的なインセンティブ(動機付け)を与えていることから、経済的手法と呼ばれる対策の一つです。また、二酸化炭素の排出量の多いエネルギーには課税額が大きくなることから、排出量の少ないエネルギーへの転換を促す効果もあります。
 炭素税を導入しても、化石燃料の消費量は減らず、二酸化炭素排出量の削減には効果がないという意見もあります。確かに、この税が導入されても、今すぐに自動車での移動やエアコンの使用を控えようという人は少数派かもしれません。
 しかしながら長い目で見れば、ガソリン代など運転時の費用が高くなると、自動車やエアコンを買い換えるときに、少し値段が高いかもしれないけれどより燃費のいい自動車にしようとか、省エネルギー型のエアコンにしようという動機になり、二酸化炭素排出量の削減につながります。また、さらに効率のいい機械の開発も促進される可能性があります。
 炭素税導入に対してはこれまで、経済活動への影響が大きく、日本の国際競争力が低下するといった点からも反対意見が出ています。
 経済的な影響をできる限り低く抑えるために、炭素税で得られた税収を温暖化対策に活用することで、低い負担でより大きな効果を得ることが可能となります。国立環境研究所の試算では、炭素一トンあたり3,400円(ガソリン1リットルにつき約2円)の炭素税でも、税収を温暖化対策に活用することで炭素一トンあたり45,000円の炭素税と同じ二酸化炭素排出量の削減効果が得られるという結果になりました。
 このように、経済的な影響をできるだけ低く抑えるとともに、二酸化炭素排出量の削減を効果的にする炭素税のあり方が検討されています。

図
国立環境研究所が行った炭素税と二酸化炭素排出量の削減効果に関する試算

【社会環境システム研究領域 統合評価モデル研究室 主任研究員 増井利彦)】

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