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2005年12月14日

大陸移動で生じた?

生物多様性(1)

 18世紀の産業革命以後、拡大した人間活動によって野生生物は生息地を奪われ、急速な減少を続けてきました。絶滅してしまった生物も少なくありません。今回から6回にわたって、生物多様性にかかわる環境問題やその研究について紹介します。第1回目は生物多様性とは何かを考えてみましょう。
 生物多様性というと、種の多さのことだと思われがちですが、それでは充分でありません。この言葉が世界に広まったのは1992年にブラジルで開催された地球サミットからです。そのときに、生物多様性条約が採択され、生物多様性は「すべての生物の間の変異性をいうものとし、種内の多様性、種間の多様性及び生態系の多様性を含む」と定義されました。これは生物種の空間的な存在のしかたを強く意識した定義ですが、イメージがつかみにくいかも知れませんので、もう少し具体的に説明します。
 たとえば茨城県では90種のトンボが記録されています。栃木県では92種の記録があり、茨城にいて栃木にいない種が9種、逆が7種です。共通でない種がいるのは、平地を好む種と山林を好む種がいるためです。宮崎県では94種の記録があり、茨城にいて宮崎にいない種が13種、逆が17種になります。これは温暖を好む種が宮崎に多く、寒冷を好む種が茨城に多いためです。
 もっと遠い場所と比較してみます。北アメリカでは茨城県と同じくらいの面積の中に約50種のトンボがいますが、共通種は全くいません。ヨーロッパには少しだけ共通種がいます。
 大陸間での種構成の違いは、1億年以上前からゆっくりと起き続けている大陸移動に関係しています。トンボの種は世界中で6000種くらいだと考えられますが、ほとんど種の重複なしに、ユーラシア大陸に1500種、アフリカ大陸に1500種、北米に500種、中南米に2000種が生息しています。したがって、生物多様性の骨格は大陸移動によって生じたものだと推測できます。
 そして大陸内での種多様性の地域差はおもに気候条件によって生じ、同じような気候条件にある小地域の中では、地形の複雑さや生物間の依存関係(捕食、寄生、共生など)が種の分布を決めているのです。これはトンボだけでなく、ほとんどの生物に共通しています。
 生物たちは何億年もかけて地球の変動に適応し、土地固有の生物が進化してきたのですが、わずか200年の期間に人間が行った開発活動が、生物の世界に猛スピードで撹乱を生じさせているのです。

写真
産卵中のアオハダトンボ雌。茨城にも生息する日本固有種。

【生物多様性研究プロジェクトグループ プロジェクトリーダー 椿 宜高】

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