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2005年10月26日

東京湾の現状、増水と影響

水と土(3)

 東京湾は、首都のお膝下に存在する我が国の代表的な閉鎖性海域の一つです。
 戦後の高度経済成長時代、公害問題が深刻な状況であった頃にくらべて東京湾の環境はかなり改善されたものの、水質や生物生息環境は充分回復したとは言えず、特に赤潮や青潮(海水中の酸素が無くなることにより発生する)が毎年発生していることから、「かわいそうな海」とも言われています。
 広くも深くもない一つの海を取り囲む人口が2,600万人にも及ぶという世界的に例をみない海域である上、自然浄化機能を有する干潟の大部分が埋め立てにより消失したことがそのような状況をひきおこしています。湾周辺の下水道の普及率は非常に高く、特に東京都23区では我が国で最も初期の頃から敷設され、現在90%以上の下水が処理場で処理されて東京湾に流れています。
 ところが残念なことに、東京湾に毎年発生する赤潮の原因物質である窒素・リンは、既存の下水処理場では充分には除去できません。
 また、これらの下水道は合流式と呼ばれる古い方式を採用しており、路面に降った雨水なども汚水と一緒に下水管に流れ込んでしまうため、末端にある下水処理場が処理し切れなくなって、未処理のまま河川や海域に直接放流されることが、しばしば起こっています。
 そこで私達は、秋に台風が通過した後、東京湾の詳細な調査を行い、増水した多摩川や荒川から水や未処理の下水が流入することで、どのような影響があるのかを調べてみました。すると海水の塩分濃度は、羽田空港の周辺で通常の3分の1以下に薄まることがわかりました。
 海水浴場の水質指標の一つである糞便性大腸菌は、平水時の100~1万倍くらいまで高くなり、アクアラインの通風口である「風の塔」までその分布が広がっていました。通常は下水処理場で汚水が処理され、塩素消毒されるため糞便性大腸菌はあまり検出されないのですが、前述の通り、雨が降って下水量が増え、処理場で処理し切れなくなり、そのまま海域に放流されるため、このようなことが起こってしまいます。興味深いことに、一般的な汚濁負荷の総量を示す有機性炭素や窒素については出水による増加は認められませんでした。赤潮発生の原因の一つであるリンについては、出水時には沖合に行くほどその現存量が増えていることが分かりました。
 赤潮は秋に終息に向かいますが、今後は台風や秋雨による出水でリン等が一時的に増えることにより、再度赤潮を発生させることはないのか等、更に詳しく調べていく必要があると考えています。

上、100cc当たり糞便大腸菌数のグラフ 下、単位面積水塊当たりの全リン総量(g)のグラフ

【流域圏環境管理研究プロジェクト 海域環境管理研究チーム 主任研究員 牧 秀明】

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