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国立環境研究所としての新展開

巻頭言

主任研究企画官 浜田 康敬

はまだやすたかの写真

 昭和30年代以降激化する一方であった公害問題に的確に対処するためには、公害の防止に関する総合的な研究を行う機関が必要であるとの認識が高まり、環境庁設置法(昭和46年)に国立公害研究所に関する規定が設けられ、昭和49年3月に当研究所が発足した。

 当時の問題の中心は水俣病や四日市ぜんそくに象徴されるような産業公害であり、研究の主眼もそれらの汚染構造や影響機構の解明に置かれてきたが、その後の諸制度の整備や関係者の努力によって汚染物質の排出抑制等の対策が進み、問題の大幅な改善が図られた。

 一方、産業技術の高度化や生活水準の向上の進展を背景に、新たな化学物質による人間や生態系への長期慢性的な影響、都市生活型の環境汚染等が環境保全に係る主要課題として浮上し、公害問題の様相が大きく変化してきた。また、近年、成層オゾンの減少、温室効果ガスによる温暖化、熱帯雨林の減少等の人間活動に起因する地球的規模の環境変化に対する懸念が急速に高まっている。

 このように、環境汚染の構造が複雑多様化するとともに、影響を広域的かつ長期的な視点から捉える必要が増していることから、環境問題への対応に果たす科学的知見の役割が益々重要になってきている。

 国立公害研究所がこうした時代の要請に即した研究活動を展開していくために、「国立環境研究所」として研究組織を一新することが平成2年度の政府予算原案に盛り込まれることとなった。即ち、地球環境研究センターを新設して国内外の研究者との緊密な連携のもとに地球環境研究の積極的な展開を図るとともに、シーズ創出研究等を実施する基盤研究部門の他に総合研究部門を設けて、公害問題はもとより、自然環境問題を含めた種々の研究課題に機動的に対応していくこととなった。関係各位の一層の御助言と御協力を切にお願いする次第である。

(はまだ やすたか)