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2014年2月28日

新刊紹介

国立環境研究所研究プロジェクト報告第106号「都市沿岸海域の底質環境劣化の機構とその底生生物影響評価に関する研究(特別研究)」

表紙
SR-106-2013

 近年、都市沿岸海域での底質環境の悪化が進行していることから、底生生物保全と底質環境修復のため、総量規制に加え、下層の溶存酸素量(DO)に係る水質環境基準の設定が検討されています。しかしながら、都市沿岸海域の下層DO低下のメカニズム、底質の酸素消費に寄与する因子など、必ずしも明らかになっていませんでした。

 国立環境研究所では、このような背景を踏まえ、平成22年度から平成24年度の3年間をかけて、典型的な都市部に囲まれた閉鎖性海域であり、初夏から秋季に掛けて毎年底層が強固な貧酸素状態に見舞われる東京湾を対象水域として、底泥中の硫化水素蓄積とその物質循環と底生生物の生息状況に及ぼす影響について調査研究を進めてきました。

 本号では、底泥における硫化物イオン形成過程と酸素消費に及ぼす影響の解明、底生生物の生存に及ぼす硫化物の影響評価、貧酸素水塊・青潮が底生生物(アサリ)個体群動態に及ぼす影響を定量評価・予測する流動・水質・底質・アサリ生活史モデルの構築、などについて、具体的な研究成果を取りまとめて報告しています。

 これらの成果は、今後の閉鎖性海域における水環境管理に有効な知見を提供できるものと考えています。

環境儀No.51「旅客機を使って大気を測る- 国際線で世界をカバー」

No.51表紙
研究者:町田 敏暢

 本号では、温室効果ガスの観測に関する研究の取組みのうち、国際線定期旅客便を使って二酸化炭素などの温室効果ガスの観測を行うプロジェクト「CONTRAIL(コントレイル)」を紹介します。

 CONTRAILプロジェクトは、本研究所と気象研究所、日本航空、航空機搭載装備品メーカーのジャムコ、公益財団法人JAL財団と共同で実施するプロジェクトで、2005年度から国際線定期旅客便を使って温室効果ガスの観測を行っています。

 本プロジェクトにより、これまで少なかった上空の二酸化炭素濃度の観測データが飛躍的に増え、上空約10kmまでの高さ方向の分布(鉛直分布)を精度よく測定することができるようになりました。

 CONTRAILプロジェクトにより得られた高頻度広域大気観測データは、二酸化炭素の循環メカニズムを明らかにする上で役立っています。観測データの利用促進にも力を入れており、現在では、世界中の研究者に公開されています。

 本号では、旅客機のどこにどんな装置が載っていて、どんな運用をしているのか。どんなデータが取れて、それらはどんな研究に役立っているのか、わかりやすく紹介します。さらに、世界で実施されている同じような定期旅客便による大気観測プロジェクトの動向やCONTRAILプロジェクトとの関わりについても紹介します。

 なお、本プロジェクトは、環境問題の解決に向けた炭素循環研究に大きな貢献があることと、官民共同プロジェクトの良い例となっていることが評価され、これまでに2つの賞(「環境賞(環境大臣賞/優秀賞)」と「日韓国際環境賞」)を受賞しています。