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2014年2月28日

気候変動枠組条約(UNFCCC)第19回締約国会議(COP19)及び京都議定書第9回締約国会合(CMP9)(ポーランド・ワルシャワ)における最新研究成果の紹介

会議の様子の写真
ワルシャワ会議総会の様子

 国立環境研究所は、2013年11月11日から2週間、ポーランド・ワルシャワで開催された気候変動枠組条約(UNFCCC)第19回締約国会議(COP19)及び京都議定書第9回締約国会合(CMP9)に参加し、気候変動に関する最新の研究成果を紹介しました。当研究所からは、地球環境研究センターより横田達也衛星観測研究室長、環境計測研究センターより松永恒雄環境情報解析研究室長、PANG Shijuan高度技能専門員、社会環境システム研究センターより甲斐沼美紀子フェロー、亀山康子持続可能社会システム研究室長、藤野純一主任研究員、久保田泉主任研究員、朝山由美子特別研究員が参加しました。

1.サイドイベント

サイドイベントの様子の写真
低炭素社会実現に向けた研究成果・行動計画書を公表する登壇者たち

 当研究所は、マレーシア工科大学(UTM)との共催で、「マレーシア、及び、アジア全域での低炭素社会実現に向けたロードマップと実践」と題するサイドイベントを11月15日(金)に開催しました。本サイドイベントでは、環境省環境研究総合推進費戦略的研究プロジェクトS-6のもとでとりまとめた低炭素アジアに向けた10の方策による温室効果ガス削減可能性に関する最新の研究成果を報告し、これらの方策を実施する機会やその際の国内及び国際レベルでの障害について議論しました。また、国際協力機構/科学技術振興機構「地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)」による「アジア地域の低炭素社会シナリオの開発」のもとで開発した「マレーシア、イスカンダル開発地域の低炭素社会ブループリントとそのロードマップ」の最新成果について報告しました。さらに、都市レベルの低炭素社会シナリオの実装についてマレーシア・イスカンダル、及び、プトラジャヤの行政官から各自治体における取り組みが紹介されました。

 昨年のワルシャワ会議で特徴的だったことの一つに、UNFCCC COP/CMPの会合において初めて日本パビリオンが設けられたことが挙げられます。当研究所は、日本パビリオンイベントスペースにおいて、以下の6つのサイドイベントを国内外の研究機関と共に主催しました。

(1) アジア低炭素社会の実現に向けて:研究からわかる2050年アジア低炭素社会への道筋、及びその具現化に向けた日本の貢献の可能性について(11月13日)
(2) 気候変動影響適応の課題への対応:適応研究とパートナーの参加のさらなる促進のための双方向セッション(11月14日)
(3) 2℃安定化に向けたアジアの温室効果ガス削減はどこまで可能か(11月15日)
(4) マレーシアにおける低炭素社会シナリオづくりと政策立案に向けた動向:イスカンダル・マレーシアの低炭素社会実現に向けた10の政策アクション公表(11月18日)
(5) 低炭素・レジリエントな社会への転換:理論から現実へ(11月19日)
(6) ダーバンプラットフォームの下で目指される2015年合意に関するダイアログ(11月19日)

 これらのサイドイベントを通じて、社会環境システム研究センター内アジア・太平洋統合評価モデル(AIM)プロジェクトチームは、「産業革命以前と比較して、全球の気温上昇を2℃以下に抑える『2℃目標』を達成していくことは容易ではないが達成可能な目標である。アジアでは、これまでの先進国型の発展の轍を踏まずに、直接に低炭素社会の構築に向かう一足飛び型開発(リープフロッグ型開発)により、対策を早期に検討・実施していくことが最善策である。その際、最初から低い濃度へ移行させる方法を、科学的知見にもとづき、社会・経済・技術的側面からセクター別、かつ包括的に検討していくことが望まれる。」というメッセージを発信しました。

2.展示ブース

ブース展示の様子の写真
当研究所展示ブースを訪れた会議参加者に研究成果を紹介

 当研究所は、COP19/CMP9会場の展示ブースエリア内で、第1週(11月11日(月)~16日(土))の間、アジア低炭素社会実現へ向けたシナリオ、全球気候モデルMIROC5を用いた将来の気候シミュレーションの結果、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)が観測した温室効果ガス濃度データを用いて作成した全球二酸化炭素濃度の変動シミュレーション、開発中の温室効果ガス観測技術衛星2号(GOSAT-2)の最新状況、環境省環境研究総合推進費による地球温暖化研究、等の幅広い環境研究への取り組み状況とその成果などを展示しました。

 多数の国の代表が激務の中、当研究所の展示ブースを訪れ、展示資料やデータなどを持ち帰られました。特に、アフリカ諸国の代表の方々から、アフリカ大陸の二酸化炭素濃度変動シミュレーションや、低炭素アジアに向けた10の方策、及びその定量化指標に関する質問を受けたことが大変印象に残りました。

 展示期間中、横田室長が、中国の「人民日報」、中国国際ラジオ局の取材を受けました。記者の「日本は先進国としてどのように今回の会議に貢献するのか」との問いに横田室長は「GOSATの研究結果は中国の研究者を含め世界中の研究者に積極的に利用されています。地上や海上の温室効果ガス観測に加え、衛星による温室効果ガス観測が実現し、観測ポイントの不足や地域の偏りなどの問題が解決されたことで、日本の温室効果ガス観測技術衛星の取り組みは、気候変動枠組条約への科学面での貢献として高く評価されました。また科学者の一員として大気中の温室効果ガスの濃度および吸収排出量などをより正確に観測することに努めています。」と応じました。

 第2週(11月18日(月)~22日(金))には、日本パビリオン前に国立環境研究所GOSAT-2プロジェクトのバナースタンドを設置したほか、展示会場の日本ブースにおいて松永室長がGOSAT関係資料の配布及び小型プロジェクタによるスライド/動画映写等を行いました。

3.ワルシャワ会議における活動を通じて

会場外観写真
UNFCCC COP19/CMP9の会場(ワルシャワ国立競技場)

 UNFCCCの交渉プロセスにおいては、2020年までの野心的な温室効果ガスの削減に向けた政治的意思の欠如が目立ちました。その一方、サイドイベントや展示を通じ、私たちは「2℃目標」達成のために更なる温室効果ガス排出削減の必要性について、当研究所の研究成果を包括的に説明すると共に、目標達成に必要な具体的な方策等を紹介してきました。その結果、世界中の多くの方々から当研究所の研究成果物に関心が寄せられ、自国の温暖化対策の実施、改善に向けて参考にしたいという声を伺いました。今後も、AIMや、GOSAT、GOSAT-2を含む当研究所の研究活動や研究成果が将来の気候変化予測の高度化や温室効果ガス排出削減施策等に活用されるよう研究に邁進していく所存です。

○ COP19/CMP9における国立環境研究所の取り組みについて、下記ページもご参照ください。

(社会環境システム研究センター朝山由美子、環境計測研究センターPANG Shijuan)

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