生物の進化と絶滅
コラム1
地球の気候はこれまで、氷期と間氷期のように気候変動を繰り返してきました。気候が変動した際、絶滅してしまった生物もいましたが、それ以上に多くの生物が、新しい環境に適応した特性を進化させ、存続してきました。
「気候変動が進んでも生物は進化するから心配ないのでは?」そう考えたくなりますが、それは2つの点で、楽観的すぎるようです。1つは、現在進行している気候の変化、特に気温の上昇の速度が、過去に生じた変化に比べて圧倒的に速いことです。今から約2万1000年前の最終氷期から現在の間氷期へ移行した時の気温の変化は、約1万年あたり4〜7°C程度の速度だったと言われていますが、20世紀後半から起こっている気温上昇速度はその10倍以上です。変化が急速すぎるため、新しい環境に適応した性質の進化が追い付かないと予想されています。
もう1つは、気候変化の有無にかかわらず、様々な人間活動のために生物が絶滅しやすくなっているという問題です。都市開発やダム建設などの開発は、もともと繋がっていた森林や河川を分断しました。生物は生息地が分断されると、気候が変化した際に適した場所に移動することが困難になります。
さらに生物の集団を構成する個体が少なくなるため、集団の中での血縁関係が高まり、繁殖しにくくなったり、進化しにくくなったりすることも知られています。人間活動はこの他にも、外来生物の導入や化学物質の放出など、様々な形で野生生物を脅かしています。これらの結果、野生の動植物の多くは気候の変化に対して脆い状態におかれています。
いったん絶滅してしまった動植物を蘇らせることはできません。気候変動による野生の動植物の絶滅を避けるためには、気候変動の進行を遅らせる努力(緩和策)とともに、動植物に対する気候以外の脅威をなるべく取り除き、野生生物が気候変動に対応できる条件を整えること(適応策)が欠かせません。