超目的と社会
論評
筑波大学社会工学系助教授 北畠 佳房
国立公害研究所創設以来の歴史の一端を担った一人として,今回の機構改革に至るまでの各位のご苦労に思いをはせつつ,今後のさらなる発展を心より祈念いたします。私の希望は以前と同じく,新たな組織のもと,社会科学的研究と自然科学的研究の共同研究の輪が広がることであります。
自然科学者が社会と係わる姿勢は,極言すれば良識ある人々が人類の生存に向かって一つになる(ill-willの人々を切り捨てる)という“緑のユートピアイズム”ないし,社会発展の名のもとで滅びゆく自然を克明に記録するという“滅びの美学”になりやすいと思います。これに対して社会科学者は,社会を支える社会的分業のメリットや,自主的に行動するという人間の主体的・創造的活動を大事にしようとするあまり,人間社会のよって立つ自然的基盤を軽視しがちであります。
この両者の研究の輪が広がるには,各位が出来るだけ早く専門分野の物の見方に習熟すると共に,学際研究(社会との接点)にあっては超目的ではなく“人間と自然との係わりの歴史の中から学ぶ”姿勢を共有する事が大事なのではと思います。
(きたばたけ よしふさ,元総合解析部第三グループ主任研究官)
目次
- 国立環境研究所に向けて巻頭言
- 不破敬一郎前所長の退官記念特別講演会その他の報告
- 地球環境保全に先導的役割を論評
- 環境モデル選択のこころ論評
- 大海に漕ぎ出せ,但しかじ取りを誤らぬように論評
- “誰が研究するのか”論評
- 国立環境研究所の発足に際して論評
- 国立環境研究所への期待論評
- 有機的な連携で論評
- 新機構の国立環境研究所への期待論評
- 同じ国立試験研究機関の立場から論評
- 大学との研究交流の推進に期待する論評
- 農薬汚染の水生生物に対する影響調査環境リスクシリーズ(6)
- 地球流体中の非線形波動のモデル化と計算機シミュレーション経常研究の紹介
- 奥日光外山沢川の水生昆虫経常研究の紹介
- アスコルビン酸ペルオキシダーゼのcDNAクローニング研究ノート
- 環境週間について所内開催又は、当所主催のシンポジウム等の紹介
- 新刊・近刊紹介
- 表彰・主要人事異動
- 編集後記