国立環境研究所の発足に際して
論評
大阪府立大学農学部教授 相賀 一郎
私が研究所を退職する直前の頃,江上信雄元所長が技術部について真剣に心配して下さっていたことを思い出しています。あれから3年経過しましたが,江上先生はじめ幹部の方々の御尽力と御配慮により,技術部の諸兄姉は現時点では最善の形で再出発されると聞きうれしく思っています。技術部問題も1つの端緒になったのでしょうが,理想に近い形で研究所の改組が完成するとは,当時は思いもよりませんでした。研究所を愛する皆々様の絶大な御努力の結果であると敬服しております。一般に組織の改組は外部環境からの強制力が決め手になると思いますが,今回の改組は,大部分が研究所の主体的な意志により行われたと聞いております。
研究所の名称が変わっても,極めて複雑な環境の諸問題の解明のために,高い学門レベルで,かつ学際的な立場で取り組まれることには変わりません。環境研究には頑固さと柔軟な思考が必要であり,多くの矛盾の併立もあります。研究所の自主性は何より大切なことです。
研究所16年の実績を基礎にして,今後,環境研究のメッカとして確固たるものを築かれることを祈ります。研究所を構成する研究者全員の個々の実力が充分に発揮出来る落ちついた研究環境が出来上がりますよう,改組の試練を1日も早く乗り越えられますよう祈っております。
(あいが いちろう,前技術部長)
目次
- 国立環境研究所に向けて巻頭言
- 不破敬一郎前所長の退官記念特別講演会その他の報告
- 地球環境保全に先導的役割を論評
- 環境モデル選択のこころ論評
- 大海に漕ぎ出せ,但しかじ取りを誤らぬように論評
- “誰が研究するのか”論評
- 国立環境研究所への期待論評
- 有機的な連携で論評
- 超目的と社会論評
- 新機構の国立環境研究所への期待論評
- 同じ国立試験研究機関の立場から論評
- 大学との研究交流の推進に期待する論評
- 農薬汚染の水生生物に対する影響調査環境リスクシリーズ(6)
- 地球流体中の非線形波動のモデル化と計算機シミュレーション経常研究の紹介
- 奥日光外山沢川の水生昆虫経常研究の紹介
- アスコルビン酸ペルオキシダーゼのcDNAクローニング研究ノート
- 環境週間について所内開催又は、当所主催のシンポジウム等の紹介
- 新刊・近刊紹介
- 表彰・主要人事異動
- 編集後記