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大海に漕ぎ出せ,但しかじ取りを誤らぬように

論評

桜美林大学文学部教授 大喜多 敏一

 私は最近はどうすれば国際的に貢献でき,また世界の人々と協力していけるかを考えることがくせになっています。新たに衣がえした環境研究所についてもその点につき考えてみました。その守備範囲は地球環境,都市環境を問いません。勿論国内問題は重要ですが,国際的に貢献することは,国内の問題解決にも貢献することです。また,後者で地方自治体の研究所の活性化を考えていただきたく,現在この点がうまく機能していないのが残念です。

 国際的な貢献は今までもなされてきたことですが,これからは異なった分野の境界領域の研究や,それらの総合化で創造性が発揮できるのではないでしょうか。従来の学問のたがより外れて,新たな環境の科学の構築が望まれます。

 幾つかの国際会議に出席し,私は欧米の研究者があたかも一つの国の研究者のように自由に討議しているのをうらやましく思いました。そして我が国の研究者(そして行政官)もこの雰囲気中に溶け込めるようになることが,特に地球規模環境問題の対応のために必要であることを痛感しました。このためにはまず我が国では省庁の壁を取り去って(我が国の研究者の総数は足し合わせても僅かなので),実力者をヘッドにしてプロジェクトを組むこと,また,世界の研究者との相互乗り入れが更に進むように,海外旅費の思い切った増額を希望します。

 最後に行政の要望は必ずしも研究の動きとは一致しないことは多くの人々が経験する所ですが,そのため「環境情報センター」が両者の仲立ちをしてくれることが望まれます。しかし,情報はある目的のために加工してこそ意義があるので,実際にはそのような総合的な知識を身につけた人,更にそのグループの存在が必要となりましょう。いずれにしても今後は従来のような狭い領域の研究と共にその総合化が問われます。そのため新しく入って来た人々には,十年間位は各基礎分野で勉学させて方法論を身につけさせ,その後,総合的な分野で活躍してもらうような配慮も必要でしょう。

(おおきた としいち,前大気環境部長)